目の特性を知ると照明も変わる
LEDの急速な普及によって、今日では住宅照明の多くが白熱灯、蛍光灯そしてLED照明の混在で、その結果として不良な照明が目立つことは不幸な現実です。さらにLEDの高い輝度や光色ムラが原因で目の疲れや、時に片頭痛を起こしたりすることもあります。もちろん浴びる光の量や個人差があるので一概には言えませんが、LEDの光は従来光源と違った特性があるためにそのような問題が生じているのかも知れません。そこでLEDの登場でにわかに「照明と視覚」に関心をもつ方が増えています。
照明とは何か?をいまさら紹介してもどうかと思いますが、照明とは「生活に役立つ光の仕事」を言います。
その光は目を刺激して視神経を経由して脳に伝わります。そこで視覚作用を起こしたり、自律神経系やホルモンの分泌などに影響を与えます。
人は外界からの情報の80%以上は光を介して目から入ります。視覚は味覚や聴覚、臭覚、触覚に比べ私たちにとって遥かに有用と思われる感覚なのです。
私たちは、目の生理について多少は勉強されていると思います。
図1. 目の構造
網膜に映し出された光の印象は視神経で電気信号に置き換えられ脳に移行され、そこで私たちが見るところの心象(心で描く絵)が作り上げられます。
網膜の中心部は光を敏感に反応する細胞が密集しており、明るい時にはカラーで見える視細胞(スイ体またはスイ状体)が働きます。
光の印象と言うのはおもに色彩の中にあります。それは自然光であれば、およそ1ルクス以上で働き、明るくなるに従って色彩がより豊かに見えます。しかし2,000ルクスを超えるあたりから、視力の上昇に頭打ちが起こります。
つまりそれ以上の照度をだしたとしても、視力はあまり上がらないため、投資に見合う効果が得られにくいことになります。
以上は一般的な視作業の場合で、検査や手術などでより細かなものを識別する作業はこの限りではありません。現に手術灯は局部的ではありますが10万ルクスを超えます。
写真1. 日中の自然光
月夜の晩のような暗さでは、色がほとんど認識されませんが、ものの形や輪郭を見せる細胞(カン体またはカン状体)が働きます。現代人はこの暗さに対する能力が低下していますが、電灯照明時代以前の人々は月が出ていれば夜道でも十分に歩ける視力をもっていた記録が多く残っています。
次のページでは「目で明るさをコントロールしている」「屈折率の異なる光の色」についてご紹介します。