いわゆる薬物問題の薬物とは中枢神経系に作用する物質です

アルコールやタバコに含まれるニコチンは中枢神経系に作用する物質です。この中枢神経系に作用するという事が、薬物問題が生じる主な原因です。

タバコやアルコールを始め、法律で禁止されている様々な薬物の乱用や薬物依存は、青少年の将来に深刻な悪影響を及ぼします。

薬物乱用対策としても、その引き金になる背景や薬物依存の危険性を知っておくことが大切です。

今回は、10代~20代のいわゆる若年層の薬物問題について、親をはじめとする大人が知っておくべきことを詳しく解説します。

悪いと知っていてなぜはまる? 薬物乱用のリスク・ファクター

薬物依存や薬物乱用が、社会的にも自身の心身にとっても非常に悪いことだということは、未成年であっても通常わかっているはずです。

それにも関わらず、少なからずの青少年が、タバコやアルコールをはじめとする様々な薬物に手を出してしまうのはなぜでしょうか? その状況と薬物の常用に至ってしまうリスク・ファクターや背景として、以下のようなものが挙げられます。
  • 薬物問題に対する理解の無さ、あるいは深刻な誤解
  • 学童期に問題行動が多かった場合
  • 精神疾患、特に、うつ病、躁うつ病など気分障害の既往
  • 親の目が子供に全く行き届かないような状況
  • 問題の多い交友関係、例えば、仲間内から薬物をすすめられるような状況
  • 学業が困難になっている
  • 親と子の絆が半ば壊れてしまったような家庭環境
  • 身体的虐待など、過酷な生活環境

薬物の種類と薬物依存・薬物乱用が深刻化していく背景

青少年の間で問題となり得る具体的な薬物として、以下のものが挙げられます。
  • アルコール
  • タバコに含まれるニコチン
  • 法律で禁止されている様々な薬物
  • 有機溶剤であるシンナー
  • 解熱鎮痛薬、睡眠導入剤、麻酔薬、筋肉増強剤
  • カフェイン(コーヒー等に含まれるカフェインも、過量になれば乱用とみなされることがあります)

基本的に、これらの薬物は、中枢神経系に作用します。この点をまずしっかり認識しておいてください。例えば、タバコに含まれるニコチンは中枢神経系を刺激する物質で、アルコールは中枢神経系を抑制する物質です。

薬物乱用や薬物依存の症状や程度は、個々の薬物の種類だけでなく、個人の遺伝子レベルで定まる生物学的要因、そして心理的要因や日常生活上のストレスなど、さまざまな要因が相互作用するため、時に個人差が大きくなります。しかし薬物問題に共通する精神医学的な問題点は、一度に過量の薬物を摂取した事による中毒症状、そして、その薬物を長期間、摂取してしまった事による依存の問題です。

例えば、アルコールの場合、一気飲みなどで一度に過量に摂取すれば、急性アルコール中毒が起こる可能性もあります。さらに、中枢神経系を抑制する物質なので、適量であれば心の緊張を取る事もできますが、過量になれば中枢神経系の抑制が強まってしまいます。もし呼吸中枢が抑制されてしまえば、呼吸停止で命を失ってしまう危険性もあります。もしアルコールを長期間、過剰に摂取し続ければ、心理的にも身体的にもアルコールに依存するようになります。アルコールが生活の中心になってしまうことで、学業や仕事、さらには対人関係においても深刻な問題が生じやすくなることも、社会生活上の大きな問題です。

特に青少年の中でも、10代の少年少女の場合、中枢神経系はまだ発達段階にあります。成人よりも中枢神経系へのダメージがより深刻になる可能性があることを必ず知っておきましょう。

また、違法薬物に限らず、比較的手軽に入手できてしまうタバコやアルコールにしても、ある薬物を試してしまう事は、他の薬物乱用・薬物依存の入り口になり得る点にも注意が必要です。薬物への心理的ハードルが下がってしまうことで、それ以後、他の薬物にも安易に手を出してしまうリスクが高くなることを認識してください。

青少年の薬物乱用対策の基本はリスク・ファクターを減らすこと

いったん薬物乱用・薬物依存の状態になってしまうと、その解決法はその原因物質を二度と体内に入れない事になります。アルコールの場合は禁酒、タバコに含まれるニコチンの場合は禁煙です。簡単に聞こえるかもしれませんが、時に非常に困難を伴います。薬物乱用対策として、何よりも大事なのは、とにかく予防することです。そのためにも、薬物問題が深刻な問題である事を充分認識すると共に、薬物問題に対して何らかの誤解がある場合は、それを是正する事が大切と言えます。

例えば、アルコールは場を盛り上げたり、人間関係の潤滑油になったりするという意識が強い場合、薬物としての側面を全く過小評価しているような場合が挙げられます。子供は親御さんの考え方を真似やすいもの。もし親御さんが頻繁にひどく酔っ払っている姿を目の当たりにすれば、それが自然なものだと、子供は認識してしまうでしょう。さらに酔っているときの親御さんが上機嫌だと、アルコールはよいものなのだという刷り込みもされてしまうかもしれません。10代の子供は中枢神経系がまだ発達段階であり、薬物の弊害が成人より強く現われやすい事を、親御さんは是非、ご留意ください。

アルコールをはじめ、薬物問題の予防としては、リスク・ファクターを一つ一つ減らしていく事が大事です。まずは家族の絆。子供とのコミュニケーションがしっかりしていれば、子供が悪い状況に陥っても気づきやすいでしょう。もしも子供の交友関係に問題があると気付いた場合、親の力で子供をその交友仲間から引き離す事も、時に必要になるかもしれません。

さらに、薬物問題は心の病気と関連深い事にも要注意! 実際、薬物問題は、うつ病などの他の心の病気を合併しやすく、また、うつ病などの心の病気は、薬物問題のリスク・ファクターになります。もしも、うつ病などの心の病気にかかった場合、出来るだけ早く治療を開始する事は、その病気の予後を良好にするだけでなく、薬物問題へのリスクを減らす事にもつながります。

また、もしも学校の成績が急低下したり、急に身なりに構わなくなったり、塞ぎこむようになったりと、お子さんの異変に気付いた場合は、うつ病など心の病気の可能性もある事にも、どうかご留意ください。

また、学童期、他の子供たちと比べて、問題行動が目立ちすぎる場合も注意を向けてほしいものです。過剰な問題行動は、薬物問題のリスク・ファクターの一つですし、場合によっては行為障害などの可能性も考えなくてはなりません。


青少年、なかでも10代の少年少女は自分というアイデンティティを築いている最中です。彼らは好奇心にあふれ、30代、40代の大人には無いエネルギーで新しい事にチャレンジしていきます。そんな少年少女でも、もし目の前にオオカミがいれば、普通なら決して近づいたりはしないはず。でも周りの環境や刷り込みなどから、オオカミがかわいい犬に見えてしまったら、安易に近づき大変な事になってしまうかもしれません。少し変な例えに聞こえたかも知れませんが、薬物問題の原因となる様々な薬物が、子供たちの目にいかにきちんと恐ろしいオオカミとして映るようにすべきかは、大人としてぜひしっかり考えていただきたい事だと思います。
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