糖尿病の食事療法も腎臓病の食事療法も最近では大きく変わってきています。そのような中で、特に両方の食事療法を掛け合わせている人からは「何を食べてよいか分からない……」という声も聞かれます。今回は、最初に糖尿病と腎臓病(透析無し)の食事療法を別々にさっとおさらいした後に、この2つの食事療法を合わせた場合、何をどれだけ食べればよいかを説明します。

基本的な腎臓病の食事療法とは?

腎臓病に優しい食事とは、一般的にたんぱく質・塩分・リン酸・カリウムの量を必要に応じて調整したものです。たんぱく質は免疫や筋肉を維持して元気に生活するために大切な栄養素ですが、腎臓病の人が摂取しすぎるとたんぱく質から作られる老廃物を上手く排出できないので、量を調整する必要があります。以前は厳しいたんぱく質制限が行われていたようですが、最近では取り過ぎはよくないけれでも、足りなくても病気になったり体調を崩しやすいと考えられています。

その他に、血圧管理のために塩分を調整する必要があることもあります。また、カルシウムの喪失を抑えて骨の健康を管理するために、リン酸の摂取を控えることもあります。更に、必要に応じて、カリウムの検査値が高い場合は食事からのカリウムの摂取を抑えたり、体重が減っている場合や痩せている場合は、脂質の量を増やして体重を増やす試みをすることがあります。

基本の糖尿病の食事療法とは?

糖尿病の食事療法は、血糖値を管理するために糖質(炭水化物)の量を調整します。血糖値が高ければ、糖質の摂取量を減らすか、運動をして血糖を消費するか、または服薬やインスリンで調整します。肥満がある場合は、インスリン抵抗性などを改善するために、運動や食事で減量を試みる場合もあります。個人の状態・症状にあった食事療法で血糖値を管理して合併症を予防します。

腎臓病と糖尿病の食事療法を両方あわせるとどうなる?

個人に合わせた食事療法が大切です。一般的に、下記のAとBを標準とし、C~Fの項目を必要に応じて組み込みます。
  • ■AとB:一般的な調整
  • A: 炭水化物量の調整 → 血糖値の管理・安定 → 糖尿病の合併症を防ぐ
  • B: たんぱく質量の過不足を避ける → 体内の老廃物を減らす&免疫維持 → 免疫をつけて、病気や風邪を予防

■C~F:必要に応じて調整
  • C: リン酸の検査値が高い場合 → リン酸の量を控える → 骨の健康を維持 → 組織の石灰化や骨が弱るのを防ぐ
  • D: カリウムの検査値が高い場合 → カリウムの量を控える → 心臓停止や神経の不調を防ぐ
  • E: 血圧が高い場合、又はむくみがある場合 → 塩分を減らす → 心臓・腎臓への負担を減らす
  • F: 体重が減っている場合、又は痩せている場合 → 脂質を増やす → 免疫をつけて病気や体調不良を予防

腎臓病&糖尿病:具体的には何をどう食べればいい?

- 食材を3つのグループに分けるだけの目分量食事法 -

まずは、食事を想像してみて下さい。お弁当箱に入った料理、お皿に盛られた料理、数々の小鉢に盛られた料理など、なんでも構いません。食材の約25パーセント(1/4)が肉や魚などの【たんぱく質】が多いもの、そして残りは半分ずつ(細かく言えば37パーセントずつ)が【糖質】と【野菜・キノコ・海藻】になるように盛りつけます。下の図のような分け方です。
食事方法

食べる食材の割合をイメージすると実践的&現実的


【たんぱく質】の多い食べ物:料理全体の約25%
たんぱく質の取り過ぎを抑えることで腎臓に優しい分量にしつつ、必要なたんぱく質を摂取して病気や風邪に掛かりにくくします。たんぱく質の量が気になる人は、ガイドの以前の記事、「すぐに分かる!食品のたんぱく質量」を参考にして下さい。

【糖質】の多い食べ物:残りの部分の半分(全体の約35%)
糖質(炭水化物)の取り過ぎを抑えながら、炭水化物の量を安定させることで血糖値の管理をしやすくします。

【野菜・キノコ・海藻】残りの部分の半分(全体の約35%)
野菜なども適量加えることで、全体の栄養バランスを整えます。

【良質の脂質】
真ん中にある、良質の脂質もとても大切です。腎臓病と糖尿病の食事療法で避けたいのは意図的ではない体重減少だと思います。体重が低下するということは、栄養が足りていない、つまり栄養失調ということになります。栄養失調になると、体調を崩しやすくなったり、体調を崩して重症化しやすくなります。

たんぱく質と炭水化物の過剰摂取は避けたいので、腎臓病&糖尿病の場合は、脂質を増やすことになります。以前は腎臓病で油を増やす、と言うと揚げ物がメインでしたが、香りのよいオリーブオイルを多めにサラダ・パスタ・魚に振りかける、または、ごま油を炒め物・汁物・煮物の仕上げに振りかけてコクと香りを足す、ハーブやニンニクをオイルに入れて香りを抽出する、など様々な美味しい方法があります。また、オメガ3脂肪酸の豊富なサケやサバなども積極的に楽しみましょう。

お弁当箱やお皿をイメージすると以下のような食べ方になります。
お皿

お皿に盛った料理をイメージした場合
【たんぱく質】麻婆豆腐 【糖質】ご飯、かぼちゃの煮付け 【野菜・キノコ・海藻】野菜の炒め物


お弁当箱

お弁当箱に詰めた料理をイメージした場合
【たんぱく質】カリカリ鮭と豆腐のあんかけ 【糖質】ぶどう、おにぎり【野菜・キノコ・海藻】ブロッコリーのオイル和え、ビーマンとキノコの炒め物


食べ方

目分量の食事法が分かっていると、どんなジャンルの食事にも対応しやすい。

あとは、自分に必要な要素を調整します。

■カリウムの調整が必要な場合
カリウムの量が多い食べ物には、バナナ、マンゴー、メロン、 キウイ、ドライフルーツ、オレンジ、アボカドなどの果物、野菜ジュース、トマト、かぼちゃ、ほうれん草、芋、チョコレートなどがあります。検査値が高ければ控えます。カリウムが低めの食べ物には、いちご、りんご、パイナップル、すいか、ぶどうなどの果物、キャベツ、玉ねぎ、レタス、いんげん、人参、なすび、きゅうり、カリフラワーなどの野菜があります。カリウムの多い食材は水に浸したり、茹でこぼすと、カリウムの量を減らすことができます。減塩・低塩の塩にはカリウムが入っていることがあるので注意して下さい。

■リン酸の調整が必要な場合
リン酸を多く含む食材には、たんぱく質を多く含む場合も多いものです。よって極端にリン酸を減らそうとすると、たんぱく質が少なくなりすぎて、栄養失調・免疫低下につながることがあります。たんぱく質・リン酸にバランスよく対処するための方法はこちらでご覧下さい。腎臓病の食事……良質なたんぱく質とは?

■塩分の調整が必要な場合
塩分に関する情報はあらゆる場所で得られると思いますが、低塩・減塩の調味料を使う場合は、カリウムが添加されていないか確認しましょう。よく使う調味料の塩分量は覚えておきたいものです。大さじ1あたりの塩分は、醤油2.5g、みそ2.5g、とんかつ・中濃ソース1g、塩6g(小さじ1は塩分2g)です。なんとなく使っているとあっという間に塩分過剰になるので注意しましょう。

■脂質の調整が必要な場合
上記と重複しますが、体重を増やすために脂質の量を増やす必要がある人は、オリーブオイルやごま油など、美味しい油を活用しましょう。油の量を増やすと言っても、マーガリン、ショートニング、マーガリンやショートニングを使った焼き菓子、ファーストフードの揚げ物などは、トランス脂肪酸を多く含みがで、体内で炎症を起こすと考えられているので、あまり摂らないようにした方がいいと思います。

食事療法は個人・ライフスタイルに合わせよう。
- 数値に奥深い食文化をはめ込まない -

食事療法となると、食材の重さを量ったり、栄養素の単位を計算したり、電卓をはじいてカロリーを求めたりする人もいるようですが、ガイドの方法は基本的に目分量です。数値を合わせるという食事療法を毎日生涯やるのは本当に大変です……というより不可能に近いと思いますし、トータル的に健康的ではないと思います。

今は数値に合わせるのではなく、自分の体の状態に食事療法を合わせる時代です。例えば「1600キロカロリーの食事」と言う代わりに「体重がそのままでよければ今の分量、体重を増やしたければ今より多く、体重を減らしたければ今より控えめに食べるか運動」という考え方です。他の要素も同じで、食べる数値を守るのではなく、症状に合わせて必要なものを必要なだけ調整します。個人の症状にその都度合わせ、食事の楽しみやQOLを落とさないテイラーメードな食事療法が大切です。もちろん、カロリー・たんぱく質・炭水化物の量を計算した方が安心して落ち着いて食べられる……と感じる人などは、もちろん目分量にする必要はありません。とにかく自分のスタイルにあった方法が一番です。

(注)実際の食事療法はかかりつけの専門家に相談して下さい。特殊なケースでは目分量で対応できないこともあります。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。