「ずっとママといっしょがいいの!」と思っていた子カンガルーの成長物語
「ずっとママといっしょがいいの!」。カンガルーの子、ベルビーは、ママのおなかの袋の中が大好き。気持ちがよくて、おっぱいもすぐ飲めるし、体をなめてきれいにしてもらえるし、ママと一緒にどこにでも行ける! 一方でママは、重くなってきたベルビーが1日中袋の中にいることに、負担を感じ始めています。「あなたもずいぶんおおきくなったわ。そろそろじぶんのあしで、そとにとびだして」。もちろん、そんなこと、ベルビーが素直に聞くはずがありません。そんなベルビーの成長物語は、入園や卒園の時期を迎えたお子さんにもぴったり。子育てが少し落ち着いたお母さんが読めば、子どもから「大好き! 一緒にいたい!」の思いを一身に受けていた頃を、甘酸っぱく思い出すことでしょう。
ずっとママといっしょがいいの! (主婦の友はじめてブック―おはなしシリーズ)
ママの袋の中が何より一番!
ベルビーのママは、困っていました。かわいいけれど大きくなって重くなってきたベルビーが、1日中おなかの袋の中にいるから……。自分の足でしっかり歩けるようになったのに、抱っこが大好きな大きな子どもとずっと一緒にいると、そろそろ抱っこは卒業してほしくなるものです。だからお母さんは必死に、そして優しく、袋の外の世界の新鮮さや楽しさを、ベルビーに伝えました。ひらひらと飛び回るチョウチョウ、楽しそうに水遊びをするゾウの親子、嬉しそうに歌う鳥たち。ベルビーをおなかの袋に入れて1日中あちこちに行き、生き生きと動き回る他の動物たちの様子を見せてまわりますが、ベルビーの心には響かないようです。ひらひら飛んでいるのを見るよりママにくっついている方がいい、水遊びで濡れるより温かいママの袋の中がいい、鳥たちの鳴き声はにぎやかすぎる……。ベルビーは、外の世界に、ママの袋の中にいる魅力以上のものを感じることがなかなかできません。大切に抱かれた時間をたっぷり過ごしたベルビーの、突然の親離れ
疲れ切ってしまったママと相変わらず密着していたベルビーの前に現れた動物が、ベルビーの心を揺さぶりました。ジャンプしながら軽やかにかっこよく走る、ベルビーと同じ姿をした動物。ママからなかなか離れなかったベルビーが突如、ママの袋から飛び出しました!家族ではない他者に囲まれて育つ第一歩
親離れの瞬間の訪れは、いつも突然。いつまでも自分にべったりだと思っていた我が子が、家族以外の人との交流に積極的になったり、その方が楽しそうな姿を見せたりすることは、親も願っていたはずなのに、どうしても寂しさも残ります。でも、ベルビーとの濃い時間を過ごしたママの、ベルビーを送り出す表情の何と穏やかなこと。そして、自信に満ちて、家族以外と外の世界を楽しむベルビーの根底にあるのは、ママと思う存分触れ合った日々なのでしょう。ママに限らず、心をかけてくれる大切な存在との濃い時間を過ごせた子は、自信に満ちて自分の世界を広げていくことができます。ベルビーのように、どこまでも、どこまでも。