非常用電源で3基まで稼働するエレベーター
飲料水と生活用水の備蓄が重要 各フロアに非常用水栓を設置
東日本大震災で、地震発生時のマンションの課題といて挙げられたのが、電源の確保と水の確保です。超高層マンションの上階から非常階段を使っての生活は困難を極めました。また、ライフラインがストップしたマンションでは、トイレなどに使う生活用水の重要度も認識されました。パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワーでは、約72時間使用可能な非常用発電機を設置。非常停電時も3基までのエレベーターを稼働します。また非常用発電で点灯可能な照明を全戸のリビングに設置しています。水に関しては、飲料水は、受水槽の水を約500リットル(1世帯当たり)、ペットボトルで約48リットル(1世帯当たり)確保。生活用水は、エコキュート内の約300リットルと雑用水約189リットル(一世帯当たり)確保しています。敷地外の下水道が損傷した場合も排水できるように約3日間分のトイレ汚水が溜められる汚水槽を設置。災害発生時の初期段階の負担を軽減します。
こうした、防災対策は、防災に対するアドバイザーで実績のあるNPO法人プラス・アーツと三井不動産レジデンシャル、竹中工務店、三井不動産住宅サービスの4社で行われ、「防災設備」「防災備蓄品」に関する対策、「コミュニティ」の育成などを柱とした万一の事態に複層的に備えるように対策が構築されています。
各フロアに防災備蓄倉庫を設置 水の要らない簡易トイレラップポンも用意
ホワイトボードやトランシーバーなど情報共有手段も用意
パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワーでは、防災備蓄倉庫も各フロアに設置しています。そこには、救急セットやブルーシート、手袋などともにトイレットペーパーとラップポンという水の要らない簡易トイレのセットも置かれています。ラップで封入するため水を必要とせず密封するので衛生面でも有効で、自治体も災害対策用として採用するなど普及しつつある製品です。共用施設である3階のコミュニティプラザは、災害時は防災対策本部として機能します。防災倉庫には、災害時に重要度の高い様々なグッズが設置されています。
東日本大震災の際にも効果を発揮したホワイトボードやトランシーバー、スピーカーなど情報伝達手段、ヘルメットなどの防護グッズ、ガスで発電するカセットガス式発電機なども置かれています。
情報伝達手段としては、共用インターホンを各階に設置し、防災センターなどと連絡がとれるほか、共用廊下の非常用スピーカーへ防災センターから情報を一斉配信できます。
防災に有効なコミュニティづくりを推進
防災プロのセミナーや防災マニュアルを配布
パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワーでは、コミュニティづくりも防災対策の一環としてサポートしています。グリーティング(入居あいさつ会)からプログラムがスタート。防災に関するセミナーの開催や、様々なワークショップなども実施。インテリジェンスルームに置かれたブックディレクタープロデュースの本には、読み継ぎカードが巻末に入っています。コミュニティが充実したマンションは、震災後の復旧も早かったといいます。こうしたコミュニティ支援も震災後のトレンドと言えるでしょう。入居者の防災意識を高める施策として、防災マニュアル「日々のこころえ集」が入居者に配布されます。ここには、災害発生時だけでなく家具を倒れにくくする工夫など事前の備えについても紹介されています。
今回竣工内覧会に参加してみて震災の教訓は、マンションづくりのいろいろなところに活かされていると感じました。3年経過した今、当時の記憶も薄れつつあるのも事実です。防災の視点もしっかり持って、マンションを見ていきたいと思います。