PS3からの移行をどう演出するか
ファンの多いMETAL GEAR SOLIDシリーズが発売されることは非常に嬉しいのですが、PS3版も発売されるということで、PS4への乗り換えをどこまで訴求できるかは難しい部分もあります(イラスト 橋本モチチ)
1つは海外でとてもよく売れていることです。おそらく今後、海外の大型タイトルはPS4にしっかり投入されるでしょう。2013年にPS3で最も売れたタイトルは、「グランド・セフト・オートV」でした。日本では携帯ハードが主流で、据え置きハードは縮小傾向にありますが、海外では据え置きハードの方がメジャーで、大規模な開発費が投入されて制作行われています。その大規模タイトルが渡ってくることで、年々国内の海外タイトル、いわゆる洋ゲーの存在感は大きくなっている現状があります。PS4の性能を追求したタイトルは国内市場はどうあれ、海外からある程度もたらされるんじゃないでしょうか。
もう1つは、METAL GEAR SOLIDシリーズ最新作、METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROESが2014年3月20日に発売されること。本体発売から1か月というタイミングで発売されるMETAL GEAR SOLIDシリーズは、PS4にとって大変心強い援軍です。実際、これをPS4で遊びたくて本体を買う、というユーザーも少なからずいるでしょう。
一方で不安もあります。PS4でしか遊べないタイトルが少ないことです。プラットフォームホルダーであるSCEが発売するタイトルこそ、PS4専用のものが用意されていますが、サードパーティー製タイトルはPS3でも遊べるというものが多々あります。本体同時発売タイトルで最も売れた龍が如く 維新!もそうですし、今お話したMETAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROESもそうです。PS4版は、画面がきれいで動きも滑らか、というような変化はありますが、根本的なゲーム体験に劇的な進化が無いものがほとんどです。
また、まだPS3で遊べて、PS4では遊べないというソフトも発売されます。2014年3月13日にフロム・ソフトウェアが発売する「DARK SOUL II」はPS3版、Xbox360版、PC版は予定されていますが、PS4版がありません。また、アトラスから発売される「ペルソナ5」はPS3専用タイトルです。いずれも中堅の人気タイトルで固定ファンも多いシリーズです。もっと言えば、PS3で100万台以上普及しているレコーダーキット、torneもPS3でしか使えず、PS4対応に関する発表はありません。
PS4のゲームも大半はPS3で遊べ、なおかつPS3でしか遊べないタイトル、PS3でしか使えない人気の周辺機器もあるとなると、まだまだPS3でいいやというユーザーは少なくないでしょう。Wii Uは大苦戦、販売が伸び悩んだXbox360の後継機、XboxOneも正直かなり厳しいと予測されます。PS4には国内市場においてライバル不在の状況ですが、PS3のユーザーが乗り換える動機が今一歩足らないように感じます。
似たような状況はPS3でも、PSVitaでもありました。PS3が決定的に勢いがついたのは、発売から3年近く経った2009年秋、値下げと新型モデル投入、年末のFINAL FANTASY XIIIで多くの人がPS3ユーザーデビューをしました。PSVitaは発売約1年半以上が経ってから、「討鬼伝」や「GOD EATER 2」などで、PSP版よりもPSVita版の方が売れる傾向に転じています。
PS4は、いつPS3からの移行を決定づけられるのか。PS3よりも便利で、PS3では遊べないどうしてもやりたい国内向けのタイトルがあって、PS3はもういらないから早くPS4が欲しいと多くのユーザーに思って貰えるタイミングが作れるか大きなポイントになります。
できれば、2014年6月に開催されるElectronic Entertainment Expo 2014(エレクトロニック エンターテイメント エキスポ、通称E3)あたりには大きな動きあり、年末には1つの盛り上がりが欲しいところです。
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