照明手法の多様性
写真4. 間接照明とダウンライトで統一感のある明るい室内
間接照明はその名の通り、部屋の天井や壁に一旦、光をバウンドして空間の明るさをとる照明です。この選択でお寺特有の暗がりは消え、美しい木目の天井からの柔らかい明るさが部屋を包みました。(写真4)
暗さの中で陰影効果を高めるLED照明もよいですが、それとは別にLEDを間接照明にすることで一味違った寺院空間に仕上げることができます。間接照明は効率を高めたい場合には勧められませんが、照明効果を高める代えがたい手法です。
使える調光
いわゆるシーン記憶調光器ではなく、ご覧のような誰でも操作できるダイヤル式の調光器を部屋毎に配置しています。ハイスペックが万能なのではなく、従来式の方が使い勝手が良い場合もあります。(写真5)
本堂や広間では、定期的な法要、講話、勉強会、会議、会食(お施餓鬼)それから通夜も行われる予定です。時間も人数、目的も様々です。
また外光をふんだんに取り入れる設計のため、部屋の明るさもお天気や時間帯によって左右されます。調光は、そのような条件や要求に柔軟に対応できます。(写真6)
普通のお寺では難しい、その場にふさわしいライティングで雰囲気に調整できます。調光は付加的なアイテムではなく、主役を務められる機能なのです。
フレキシビリティ
LED照明器具は一旦、設置すれば少なくとも10年は持つと言われます。この耐久性は魅力ではありますが、逆に途中修正の難しさを生んでいます。庫裏のほとんどはダクトレール(配線ダクト)用のLED電球用スポットライト器具で構成されています。それは器具の位置や方向、光源を自由に変更することができるからです。(写真7)
長年のうちには、家族も成長し、部屋の使用目的も移り変わります。さらにLED電球も格段に進化するでしょう。寿命が長いからこそ、計画的に変更の余地を残すことも必要です。
今日では照明と言えばLEDが一般的になりました。しかし、ただ従来光源に代替するだけでは、おもなメリットはコスト面に限られます。
LEDによる本当の豊かさを享受するには、器具のコスト面以外のスペックを十分に確認し、使用空間にあったオリジナリティのある選択をお勧めします。
写真8. 溢れるような暖かい光の美しい夜景
建築設計:山本想太郎設計アトリエ
写真撮影(写真5を除く):山本想太郎
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