古の時を経て、よみがえる緑の空間と風格と品やかさを併せ持つデザイン
そして、ここの庭。
明治・大正期に七代目小川治兵衛こと庭師「植治」の長男の白楊(はくよう)が、もともとこの地にあった巨大な自然岩盤を活用してつくった庭が、ここにあった。
村野氏が佳水園を設計する時に、豊臣秀吉と縁のあった醍醐三宝院の庭を模して白砂敷きの中庭をデザインした。
白砂の上に緑で描かれた瓢箪型は秀吉の馬印で「徳利」をあらわし、円形は「さかずき」を、そして岩盤から落ちる滝の水は「酒」をあらわした、と言われている。
古の時を経て、その時代の目線で意味付けた創作活動である。
それにしても、各々に意味があることを知ると「ヘ~、ソーなの」と感心させられるが、ようするに「遊びのデザイン」。機能だけではなく、遊びをもってデザインする、遊びに意味があれば、フムフムなのだ。
建物外観から内部に移すと、窓とすだれ越しの庭園をのぞむココは、ひんやりとした空気が漂っている。
村野建築にはかならず、村野デザインがある。建築部位はもちろん、照明、建具、家具などインテリア(室内空間)デザインが独特。風格と品やかさを併せ持つデザインに引き込まれる。
高さ300ミリそこそこの低さとゆったりした広さの座面、ゆるやかに曲線を描く細いアーム、藤で編み込まれた背のイージーチェア(安楽椅子)は、大きいボリュームと繊細な面、そして軽快な線から成り立っている。
椅子にからだをあずける……「ふぅ~」、身も心も落ち着いてしまう。
湯船につかったようで心地よい低座の目線は、おのずと白と緑の庭園に向かう。
静寂の時が流れ、窓越しに見える白砂の中庭、そして絵になる椅子の風景がここにある。
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■今回の関連リンク
→ウェスティン都ホテル京都
オフィシャルホームページ
→【石川 尚の『美品散歩』#13】
箱根で村野藤吾の美意識を読む。
→石川 尚のスケッチコラム
【椅子のある風景】
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