しなやかに、軽やかに………柳宗理:『バタフライ・スツール』


緩やかな緊張感のある線で、凛々しい『顔』を生み出している椅子がある。

今回ご紹介する椅子は、60年ほど前にデザインされた日本の座椅子:『Butterfly Stool/バタフライ・スツール』・・・名前の由来のとおり、まるで蝶が羽根をひろげているようなスツール。

日本の独自のものを創ろう!と日本中を駆け巡った柳学生

1954年、アメリカの統治下から離れてまだ間もない時期に、この椅子は工業デザイナーである柳宗理(ヤナギソーリと呼ばれているが、実は‘やなぎ むねみち’が本名)氏によってデザイン、発表された。

当時、我々日本人にとって、ヨーロッパやアメリカ文化が眩しく見え、一般庶民の住まい空間では、床に座る生活が中心の時代、TV(このTVも一般庶民には高嶺の花)の向こう側から光り輝く欧米家庭のインテリアに憧れた時代だった。そー、ミッドセンチュリーと呼ばれるイ-ムズ(保存版:イームズ展でご紹介)等は、まさに憧れの的……たかだか、5・60年前のお話……最近では和の文化が新鮮で、椅子を使用しない床での生活スタイルが流行っているが、とにかく、当時はそんな“憧れ”を抱いて日本が戦後から新時代へ向かっていく時期だったのだ。

デザイン界も欧米スタイルを意識し、輸入デザインものが反乱し始めていた。とくに椅子は、床での生活スタイルを徐々に椅子とテーブルに置き換え始めた時代だから、どこかの物まね的な工業デザインが多かったように思う。

そんな時代の真只中、欧米のスタイルをひとつも用いていない『日本のカタチのスツール』が生まれた。

日本の商工省(現:経済産業省)の招きで、新しいデザインの指導の為に来日したシャルロット・ペリアン女史(日本を愛したフランス人の椅子でご紹介)と共に日本中を駆け巡った柳氏………当時、彼はフランス語のわかる学生………欧米の近代文化に耳を傾けながら、日本各地で出会う(日本)独自の文化の中に驚嘆するものを発見したのであろう。そこに潜むカタチや心……もちろん技や匠も。。。西洋にはない、日本の独自のものを創ろう!という意識が芽生えたのかもしれない。

まずは、7:5のサイドビュー


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サイドからのプロポーションは、7:5の単純な長方形………角がとられ、木目の柔らかい流れに気品漂う。座面すぐ下と脚元中央に金具が見える。

 


(写真をクリックすると、画像が拡大されます。)

柳氏は成型合板の製作で有名な山形の天童木工(株)でこのスツールを生産し始める。当時、イームズ夫妻から世界的に広がったあの成型合板技術なくしては、この美しい造形は工業製品になりえなかったのである。



それでは、次ページにてこのスツールの細部をご紹介しよう!