ツボ・経絡/季節の悩みに効くツボ

花粉症に効くツボは? 東洋医学での花粉症対策法

【鍼師灸師あん摩マッサージ指圧師が解説】多くの方が悩む花粉症。2000年以降は花粉飛散量が大きく増加しているため、今後も予防対策が大切だと考えられます。マスクや薬などによる予防はもちろん、花粉症に有効な東洋医学の知恵であるツボもぜひ覚えて活用してみてはいかがでしょうか。

山木 伸允

執筆者:山木 伸允

鍼灸マッサージ師 / 鍼灸療法・ツボガイド

国土面積の12%を占める杉林……近年の花粉飛散量は?

飛散する花粉

その年により異なる花粉飛散量。一方で、総飛散量は2000~2005年の5年間だけで、1965~1994年の間の総飛散量を上回っていました


この季節多くの方の悩みの原因となる花粉症。様々な花粉が原因となりますが、なかでもやはりスギ花粉が代表的な原因の一つであると言えるでしょう。それは日本の森林面積の18%、国土面積の12%が杉林で占められているということからも窺い知ることができると思います。

他にも関西ではヒノキ花粉の飛散量が多いなど地域によって飛散する花粉の種類が違うことも明らかになっています。ヒノキ花粉はスギ花粉ほど注目されてきませんでしたが、それには植林された時期の違いが関係していると考えられています。

スギは昭和20年代に集中的に植林され、昭和40年代には花粉を飛ばすまでに成長しましたが、ヒノキが植林され始めたのはスギに遅れること10年ほどの時間があったため、早くからスギ花粉に注目が集まったのだと考えられていますが、現在ではスギもヒノキも同量に近い飛散量となったと言われています。

またスギ花粉は2月中旬から4月中旬に飛散のピークを迎えますが、ヒノキ花粉は3月中旬から5月中旬まで飛散するため、両方の花粉に症状がでてしまうと4ヶ月近く花粉症に悩まされてしまうことになるのです。

独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部の調べでは1995年以降のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は増加傾向にあり、2000年から2005年の5年間の飛散量だけで1965年から1994年の間の総飛散量を上回っていることを明らかにしています。
 

花粉症のメカニズム

花粉症はアレルギーの一種であり、1から4まであるアレルギー分類のなかで1型アレルギーに分類されています。同タイプのアレルギーには蕁麻疹や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などが挙げられます。花粉症の場合では、飛んできた花粉が鼻や目などの粘膜に接触し、アレルギー症状の原因物質であるヒスタミンという化学物質が活性化します。

このヒスタミンが同様に粘膜に存在するH1受容体と結合することで血管拡張や血圧低下、かゆみを感じる知覚神経の刺激、白血球の遊走などを引き起こすため鼻水、くしゃみ、かゆみなどの症状を発症させていることがわかっています。

私たちが薬局などで手に入れることができる市販の花粉症薬はこのH1受容体の作用を抑制し、ヒスタミンと結合できないようにすることでアレルギー症状を抑制しているのです。つまり、花粉症薬はアレルギーそのものを治す薬ではないということです。

さて、こうした花粉症にたいする基礎知識を踏まえ、東洋医学的観点から考える花粉症と、花粉症の症状にきくツボについてみていきましょう。
 

東洋医学で見る花粉症とは……花粉症に関わる肺と脾の経絡

花粉症の症状で多くの人が悩む原因になる鼻水・鼻づまり。東洋医学的な観点では鼻は肺の支配下にあると考えられています。肺に風邪(ふうじゃ)や寒邪(かんじゃ)が侵入し、肺の機能が低下すると全身に津液(しんえき)という水分が行き渡らなくなり、余分な水分が鼻にあふれ出すことで鼻水や鼻づまりが起こると考えられています。

特に風邪は春にその強さを増す傾向があると考えられています。風は軽く、高く舞う性質を持つため風邪による症状は鼻やのど、目など身体の高いところに現れるとされています。また、症状が突然出たり消えたりと移動するという性質を持っています。風邪の持つこうした特徴は花粉症の代表的な症状にかなり近似していると言えるでしょう。

また、同じ花粉症による鼻水でもさらさらした水っぽい鼻水がでる場合、肺だけでなく脾(ひ)の働きが衰えていることが考えられます。脾の働きが低下すると身体を邪気の侵入から防ぐことができなくなり、風邪や寒邪が体内に侵入しやすくなります。

また、脾は食物から得たエネルギー水穀の精微(すいこくのせいび)によって津液を作り出し、余分な津液を肺に送り体外に汗や尿として排泄するようにしているのですが、こうした作用も脾のエネルギーの衰えにより低下してしまい体内に余分な水分があふれ、むくみや鼻水といった症状が発生すると考えられます。

こうしたことを前提に東洋医学的な観点から花粉症を改善するには、まず肺の気を高めることにより侵入した風邪の働きを弱めること、さらに脾の働きを高め風邪の侵入を防ぐことが大切なのではないでしょうか。
 

花粉症に効くツボ

肺のエネルギーを高め鼻の通りをよくすると言われる列缺

肺のエネルギーを高め鼻の通りをよくすると言われる列缺

まず肺の気を高めるツボから見ていきましょう。

手首の親指側にある骨の隆起から指幅二本分肘に向かったところにある列缺(れっけつ)というツボは肺の経絡(けいらく)に属しており、優しくマッサージすることで肺のエネルギーを高め、鼻に停滞した余分な水分を取り去る効果があると言われます。
 
肺兪にお灸をすることで肺に侵入した風邪を追い出すことができると考えられる

肺兪にお灸をすることで肺に侵入した風邪を追い出すことができると考えられる

また、肩甲骨の一番上の角を結んだ背骨から指幅二本分外側にある肺兪にお灸をすると肺に侵入した風邪の働きを弱め、追い出す効果があると考えられています。
 
足三里は脾のエネルギーを補い身体の抵抗力を向上すると言われる

足三里は脾のエネルギーを補い身体の抵抗力を向上すると言われる

次に身体の防衛機能を高め、津液の流れを改善する効果があると思われる脾経のツボ、陰陵泉と足三里にお灸をしてみましょう。マッサージをするのも効果的ですが、温めることで陽のエネルギーを補給することがとても大切です。
 
足三里は脾のエネルギーを補い身体の抵抗力を向上すると言われる

足三里は脾のエネルギーを補い身体の抵抗力を向上すると言われる

足三里は膝のお皿外側下端から指四本分下の筋肉を押すとややへこむところにあります。また陰陵泉は座って膝を立てた状態で脛骨の内側を指でさすって上に進んでいくと、自然と止まるところにあります。
 

まだまだ続く花粉の季節。薬やマスクだけでなく、東洋医学の知恵とツボを用いることで、さらに予防効果が期待できるのではないでしょうか。
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