神楽坂下近くにたたずむ“町のそば屋さん”「翁庵」
和・洋を問わず人気グルメ店がひしめく神楽坂。そんな神楽坂と外堀通りが交差する神楽坂下近くに、老舗そば店の「翁庵」があります。神楽坂名物の1つ、“ペコちゃん焼”で有名な不二家のちょうど向かいの立地。最寄駅は神楽坂駅ではなく飯田橋駅です。同店は神楽坂通りに面してはいますが、少し入口が奥まっている関係で、よりひっそりとたたずんでいる印象です。そば店にはミシュランガイドに掲載されるような高級志向の店と、立ち食い店や家の近所の日常利用するような庶民派店に大きく分かれますが、同店は後者のタイプでしょうか。お昼時には、近隣の住民やビジネスマン、東京理科大関係者などが訪れる地元密着型の一店です。
創業は1884年(明治17年)
翁庵の創業は、1884年(明治17年)の5月5日。明治以降、花街として栄えた神楽坂で産声を上げ、その歩みを止めず今に至っています。同店の並びには(まだこちらで紹介していませんが)同じく創業100年以上のうなぎ店、「志満金」もありますね。では翁庵の創業1884年とは、どんな時代背景だったのでしょうか……前年に今の内幸町に鹿鳴館が完成。政府高官や外交官の方々を中心に舞踏会や宴会を行うなど、欧化政策の象徴的な建物です。1884年からは同所でご婦人たちによる日本初の慈善市(バザー)もスタート。明治10年代後半は、鹿鳴館時代と呼ばれています。
また、洋服の広まり、バリカンの輸入など、着物やちょんまげの時代からの移行期を感じさせる史実があるのもこの年のこと。そんな鹿鳴館時代真っ只中に、翁庵の歴史も始まっています。
では、100年以上営業を続けるそば店へと参りましょう。