専用部分に防災倉庫を持つマンション
前のページで防災倉庫に触れましたが、2013年秋、各住戸ごとに専用の防災倉庫を導入したマンションも出現しました。企画したのは大手デベロッパーの大京で、総戸数は99戸、兵庫県神戸市の分譲マンションです。用意されたスペースは幅は40センチから80センチメートル、高さは2メートル程度あり、中には2枚の棚板がついています。大京が消費者調査をしたところ、防災グッズの収納場所が「ない」もしくは「足りない」という意見があったため開発したとのことです。
このように防災用の備蓄倉庫が各住戸に用意され、日ごろから十分なストックがあれば、地震、多雪などの災害時だけでなく、例えばやノロウィルスやインフルエンザ蔓延時に不要不急の外出を避けられるメリットもありそうです。
家具転倒防止対策は減災の基本
阪神淡路大震災の時、ケガをした人の多くが転倒した家具の下敷きになったことがわかっています。家具の転倒防止対策は、倒れやすく危険度の高い家具から行います。危険な家具の特徴は「奥行きが浅く」「背が高い」もので、食器棚やタンス、本棚などが該当します。効果のある「ビス止め」、でも難しい
家具の転倒防止対策で最も力を発揮するのが「ビス止め」です。L型金具を用いて家具と壁、家具と木枠などをビスでしっかり固定します。ところがマンションの場合、コンクリートでできている壁もあり、ビス止めが難しいケースが見られました。石膏ボードの壁には直接ビス止めができますが、壁の内側にある下地材の位置を特定し、そこまでビスを貫通させないと結局大きな揺れに耐えられず、抜けてしまいます。一般の人にとっては壁に隠れて見えない下地材の入っている位置を特定しにくいという問題もありました。
あらかじめ下地を入れて対応
あらかじめ家具転倒防止下地が入れてあると便利。
これはたいへん助かる仕様だと思います。ビス止めが可能な下地が壁にわかりやすく入っていれば、一般の人でも自分でビス止めの措置ができるようになります。
落下防止の耐震ロック付き吊戸棚
また、地震の揺れで吊戸棚の戸が開き、中のものが落ちてケガをするケースも報告されていますが、地震の揺れを感じたら自動でロックがかかり、扉が開かなくなる「耐震ラッチ」付きの吊戸棚を採用するマンションも増えています。耐震枠付きのドア
玄関ドアの耐震枠概念図。いざというときドアが開かないということがないように。
窓の場合は、窓枠がゆがんで戸が開けられないときはガラスを割って脱出することができますが、玄関ドアがゆがんで開かなくなると脱出が厳しくなります。そこで、地震時に枠が多少歪むことを想定してクリアランスを見込んでつくっている「耐震ドア枠」を採用していれば、閉じ込めを防ぐことができます。
防災設備の充実度に注目
東日本大震災から3年たち、防災対策が進んだマンションが出てきています。今回は、震災後にマンションに採用されるようになった防災対策の例をいくつかご紹介いたしました。これからマンションを購入する方は、ぜひ「このマンションにはどんな防災対策があるのだろうか」という点もしっかり確認するようにしてください。【関連記事】
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