リプロダクト品を楽しもう!!
リプロダクト品、ジェネリック品と呼ばれるデザイナーズ家具を、イームズのシェルチェアを購入して考えてみました。結論を言ってしまうと、「リプロダクトのデザイナーズ家具は、条件付きで、アリ!」です。リプロダクトのイームズと正規品のトム・バック、イケアのパイン材テーブルを並べてみました。このように、今はオリジナルかそうでないかは大きな問題ではなく、手軽にさまざまなデザイン、価格、時代、テイスト、生産国、デザイナーの家具を自由に組み合わせていくのが、「ファスト・インテリア」として気楽なトレンドになってくるような気がします。
もうひとつは、オリジナルデザインの設計者に敬意をもつこと。意匠権が切れているとはいえ、デザイナーや建築家は試行錯誤を重ねて商品として仕上げています。作者のことを調べたり、設計意図を理解することは大切だと思います。そして、正規品(オリジナル)と呼ばれているものの購入も視野に入れることも考えてみましょう。
リプロダクト品のフォルムは、正規品とほとんど変わらずフォトジェニックなので、広告の撮影用や、大量に購入が必要な公共施設など使われていると聞きます。ですが、製作段階ではデザイナーと製造メーカーが協力して完成させたはず。そうした、開発時の製作者たちをリスペクトする気持ちも大切だと考えます。
オフィスに置かれたリプロダクト製品のイームズのワイヤーシェルチェア。珍しい赤はリプロダクトならではのもの。このように、さまざまなテイストのチェアを組み合わせるのも今風ですね。写真提供:株式会社メイドイン
正規品を扱う代理店やショールームなどに行って丁寧な仕上げや職人さんの心意気を感じて心が動いたら、「正規品」のメーカーの家具を「一生モノ」として購入することも考えてみましょう。実際、リプロダクト品をネットの情報だけで購入することは、素材や構造まではよくわかりません。破損や修理の保障があるところは少ないようですし、通販は一種の賭けです。リプロダクト製品を作ることが不可能な、ハイレベルな造りの名作デザイナーズ家具はたくさんあります。
こうしたことを踏まえて、リプロダクト、ジェネリック家具を購入するかどうか、検討してみましょう。リプロダクト品のよさは、その安さから「道具として使い倒せる」というメリットがあります。今回、購入した椅子は、木でできた脚を身長に合わせて躊躇なくカットすることもできますし、下地処理をしっかりとすれば、好きな色に脚やシェルを塗り替えることも不可能ではありません。また、好きなファブリックで座面を包むなど、DIY的な作業も楽しめます。
シェル・チェアは、イームズ夫妻が「安価で大量生産でき広く普及すること」を目的に作ったといわれています。その意味では、希少なビンテージ品が高騰するよりも、意匠権が切れて世界中の人々が手に入れやすくなり、続々とリプロダクトされている今の状態が健全、という解釈もできます。近年のリプロダクト品では素材もFRPやPP材だけでなく、透明なアクリル素材のシェルで作られたものもあります。こうしたものは、コピーを超えて別の意味が生まれ、イームズへのオマージュと、とらえることもできます。
いろいろなショップを回って、自分の目で確かめてお気に入りのデザイナーズ家具を探すのは楽しい作業。たとえば、一人暮らしの部屋でも、ひとつデザイナーズものを取り入れることで、グッとインテリア空間が華やぎ、ステキな時間がすごせることでしょう。ブランドやデザイナーにとらわれず、家具を作品ではなく実用品として使い込んでいくことをオススメします!!