かつてはなかったスープカレーという札幌のご当地グルメは、札幌の味としてすっかり「市民権」を獲得しました。このスープカレーがどのように誕生したか、またどう発展してきたかを振り返りながら、ガイドおすすめのスープカレーの名店をご案内します。

【目次】  

世界席巻する北のご当地メニュー・スープカレー

「え、スープカレー? 昔給食で食べたカレースープみたいなもんですか?」

札幌でよく聞かれたこんな会話も、今はもう昔の話。スープカレーというかつてはなかった食べ物、昨今では新聞や雑誌、TVのグルメ番組など各種メディアからも幅広く採り上げられ、札幌の新しいご当地グルメとしてすっかり「市民権」を獲得し、「ピカンティ」や北海道大学の近くにある「カレー食堂 心」などは、かの世界的グルメガイドブック・ミシュランでも紹介されました。
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ミシュランにも取り上げられた「カレー食堂 心」のスープカレー 

ブイヨンやフォンドボー、野菜等で丹念にスープをとり、そこにチキンレッグや丸ごとのじゃがいも、なす、にんじん、レンコン等野菜、きのこ、たまごなどを入れてぐつぐつ煮込む。最後に各種調合されたスパイスで香りを付けて出来上がり! という、滋養豊富にして贅沢垂涎、豪華絢爛なる、北国は札幌ご当地グルメのニューヒーローが、これスープカレー。今や北海道のみならず、東京首都圏から関西、九州、はたまた海を越えて香港、シンガポール、タイと海外にまで凄い勢いで進出しています。

スープはさらさらから濃厚なものまで、また味もトマト味、激辛スパイス、和風あっさり、海老味など千変万化。中に入る具はスタンダードなチキン、ラム、豚の角煮、ハンバーグ、えび&カニなどのシーフード、素揚げやボイルした野菜類、ゆでたまごに加え、ちょっと変わったものではぎょうざ、おでんの具、納豆、エビ天、豚しゃぶ、さらにはスープカレーラーメンからつけ麺まで、とにかく「何でもあり」の世界。まさにニューエイジ御用達の「アバンギャルド・フーズ」とも言えましょう。

さて、こんなスープカレーという今までなかった食べ物がいったいどのようにして生まれ、どうやって札幌で誕生し、どのように定着していったのでしょうか?

【写真掲載のお店】
カレー食堂 心 (ミシュランガイドブックに紹介)
住所:    札幌市北区北15条西4丁目2-23
TEL:    011-758-8758
公式サイト:http://cocoro-soupcurry.com/ja/

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スープカレーの誕生秘話

スープカレーが初めて札幌にお目見えしたのは1971年と言いますから、今をさかのぼることおよそ半世紀。札幌市内にある「アジャンタ」という喫茶店で、来店客の健康増進のため漢方と香辛料をブレンドした「薬膳スープ」というものをお店に出したのが今のスープカレーの始まりだとか。

当時は具材が入っていない単なる薬膳スープだったそうですが、店に来るお客が「せっかくの具材を捨てるなんて、こりゃあもったいないべや。チキンも野菜も入れろ!」との強い要望で野菜が入り、チキンが入って、徐々に今あるスープカレーの形に向けて進化の道を歩みだしました。
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創業当時の薬膳スープを思わせるシンプルなアジャンタの「らむカリ」

1980年代に入ると、辛味を効かせたスパイスとダシのうま味を強調して「スリランカカレー」で人気を博した「スリランカ狂我国」(現在は閉店)や素揚げした野菜をトッピングし、トマト味スープを使うという現在のスープカレーのスタイルを確立した「木多郎」が登場しました。

これらの流れを受けて1993年には、30種類以上のスパイスをブレンドしたインドネシア風の「マジックスパイス」というお店が初めて「スープカレー」と命名。かくしてこのカレーだけでない、スープだけでもない摩訶不思議なる食べ物が自らのアイデンティティーを得て、札幌の町で一人歩きをはじめた次第です。
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スープカレー名付け親、マジックスパイスのスープカレー。豆、野菜類、チキン等の具材とスープが混然一体となっている。


【写真掲載のお店】
アジャンタ インドカリ店
札幌市中央区南29条西10丁目6-5  TEL:011-301-6070

マジックスパイス 札幌本店
札幌市白石区本郷通(南)8丁目南6−2  TEL:011-864-8800

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人におしえたくないお店、SAMA大谷地総本店

お気に入りの店で、自分だけの隠れ家として独り占めしておきたい…そんなお店って、必ずあるものですよね。筆者にとってそんな「人におしえたくない」スープカレーショップが、こちら「SAMA 大谷地総本店」です。
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人におしえたくないSAMA大谷地総本店

札幌の東西を走る国道274号線と厚別中央通と呼ばれる南北の道路が交差する場所に位置するこのお店、車がないとちょっと不便な場所とはいえ、平日でもスープカレー好きの方々が行列をつくって開店を待っています。

SAMAでスープカレーを味わう為には、いくつかの手続きが必要。まずメニューからお好みの品をオーダー。スープカレー定番のチキンレッグ入りやハンバーグ、シーフード、キーマ納豆と様々なメニューの中から、今回はこちら大谷地店にしかない限定品、パリパリに素揚げしたチキンを載せた「パリチキとチーズのカリー」を選んでみましょう。
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お店限定、パリチキとチーズのカリー

最初に「カレーの命」とも言えるスープの味をチョイス。SAMAで一番人気のトマト味、まろやかなココナッツ味、和風だしをベースにしたあっさり味、それに海老味、くりーみー海老味の5つから選びます。次はちょい辛0番から激辛10番、そしてマニアックな30番までお好みに応じてセレクト。ただし、極上スープの味わいを堪能するには少し抑えめの辛さを選んだ方が無難です。

カレーの基本であるスープをどれにするかで、印象はずいぶん変わってくるでしょう。ただ、どれを選んでもスープとスパイス、それにチキンやポーク、野菜といった具材を含むすべてがバランスよく調和している。例えてみれば、スープという指揮者のもとでチキン、たまご、なす、にんじん等の楽器奏者がスパイスのリズムで音楽を奏でているような感じですね。

さてお待ちかね、オーダーした料理が来ました。最初にスプーンでスープをすくい、エスニックな香りを楽しみます。そして一口。スープのうま味とそこに潜むスパイスの辛味が舌を通じて脳に心地よい刺激を与えてくれます。この段階で、押さえていた食欲を思いっきり解放してあげましょう。

スープ、チキン、ライス、なす、スープ、ライス、たまご、にんじん、スープ、ライス、チキン、じゃがいも、スープ…

あなたはまるでカンフー映画の早業のように激しくスプーンを繰り出し、おおきな鉢の底に残ったスープも余さず一気に平らげてしまいます。最後に、食べ終えた後の大きなふ~っという溜息。そして口の中に残ったスパイスの余韻を楽しむ……。

このように一度口にしたら、やみつきになってしまう、これが「皆さんにおしえたくない」SAMAのスープカレーなのであります。

なお、札幌市内はもとより道内や本州各地にもSAMAのお店は何店かあります。他店の場合は、やはりスープカレーの原点とも言うべきアイテム、大きな煮込みチキンレッグと北海道の新鮮な野菜がたっぷり入った「チキン野菜カリー」がおすすめ。各店近隣の家なら電話でスープカレーを注文できるデリバリーサービスも行っていますので、ゆっくり自宅でスープカレーを味わうというのも良いですね。
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大きなレッグが入った人気メニュー、チキン野菜カリー


【SAMA 大谷地総本店】
営業時間: 11:30~15:30, 17:00~22:30
定休日:   第2水曜日
住所:   札幌市厚別区上野幌1条2丁目4-43
電話:  011-894-2247
公式サイト: http://www.hb-sama.com/WebBoard/data/2/page_2_2.html

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スープカレー伝道師の味 らっきょ エスタ店

スープカレーが札幌にお目見えした頃は、どちらかと言えばスパイス激辛大好き人間やエスニックファン達のマニアックな食べ物でした。そんなスープカレーを「もっと万人向きに」と工夫を凝らして今の味にしたというのが、らっきょのオーナー、イデ・ゴウさん。

彼は、スープカレーショップを経営するかたわらスープカレー教室を開催したり、スープカレーのイベントに参加したり、またあるときは大手食品メーカーと提携してスープカレーの書籍を出版したりテレビCMに出演したりと大活躍。まさにスープカレーを世間に広める「スープカレーの伝道師」とも言えるマルチ人間です。
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イベントでスープカレーを提供するイデさん

イデさんにとっての「伝導所」である店舗ですが、札幌市内では西区にある本店「札幌らっきょ」と白石区の「らっきょ大サーカス」に加え、2017年に街のど真ん中、札幌駅ビル・エスタの10階に「らっきょエスタ店」がオープンしました。
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駅ビルにオープンした、らっきょエスタ店

ラピスブルーを基調とし、らっきょのイニシャル「R」を大きく掲げたおしゃれな店の外には、開店早々にもかかわらず順番待ちの客の姿も。メニューは定番の北海道産チキンスープカレーや舞茸とベーコンチーズをパイで包んだ変わり種パイ包みスープカレーもありますが、こちらのイチオシはイデさんが当店のオープンを記念して精魂込めて作り上げた新メニュー、「十勝産どろ豚角煮のスープカレー」です。
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スープが絶品!十勝産どろ豚角煮のスープカレー

ちょっと耳慣れないこの「どろ豚」とは、広大な十勝の農場で、まさに泥まみれで放牧飼育したオリジナルブランドの豚のこと。木の実や自然の土に含まれるミネラルなどの栄養分をたくさん摂取するので豚特有の臭みは大幅に抑えられ、肉質と味が変わります。

実際にいただいてみると、トマトをベースにフォンドボーで上品に味付けしたらっきょ風スープに甘みとコクのあるブランド豚のラードが溶け込み、パンチの効いたスパイスと相まってその味は絶品! 今まで食べ慣れていたスープカレーの味をさらなる深遠かつ高雅な世界に昇華させる、いわば「らっきょスープカレーの進化形」とも言うべき逸品が誕生したと感じた次第です。

それと、札幌を訪れて初めてスープカレーを食べるという方は、お子様ランチならぬ「大人様ランチ」はいかがでしょう? スタンダードなスープカレーの味を体験しながらスパイシーなチキン(チョイスでキーマ)やエスニックなアソートも味わえるという欲張りメニュー。北海道型に盛りつけたライスを写メしてSNSなどに投稿すれば、いいね!が続出すること請け合いですよ。
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北海道を喰らう!大人様ランチ


【らっきょエスタ店】
営業時間: 11:00~22:00 (LOは21:20) 
定休日:  エスタの休館日に準ずる
住所:   札幌市中央区北5条西2丁目5 札幌エスタ10階
電話:   011-596-7655
公式サイト: http://www.spicegogo.com/

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スープカレーと天麩羅がコラボ!奥芝商店 おくしばあちゃん

スパイシーなカレーにエビ味スープという新しい要素を取り込み、札幌で一世を風靡した奥芝商店。エビの旨みを丹念に抽出したという濃厚な「奥芝エビスープ」の味わいは札幌のスープカレーファンたちを魅了してきました。そんな奥芝商店が札幌の高級住宅街・宮の森に「おくしばあちゃん」という、その名前からしてユニークなお店を作りました。ユニークなのは名前だけではありません。お店内外の雰囲気、それにお店のメニューも……。
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お店は民家風のたたずまい

外観は民家風のたたずまいに黒い塀と長暖簾。一歩お店に中に入ると、和風の長いカウンター席とその向こうで天麩羅を揚げる店長さんの姿。スープカレーのお店というより、和食の割烹か老舗の天麩羅屋さんのようなイメージのお店です。
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割烹か天麩羅専門店を思わせる店内

それもそのはず。当店のイチオシメニューが、なんとスープカレーと天麩羅をコラボさせた「おばぁのよそ行き天ぷらカリー」。6品の天麩羅の中から大海老、かき揚げ、半熟玉子をチョイスして待つ事しばし。丼に入ったあつあつのエビ味スープカレーと揚げたてのボリュームある天麩羅がド~ンと出てきました。
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スープカレーと天麩羅のコラボ、おばぁのよそ行き天ぷらカリー

最初は岩塩を付けて天麩羅をそのままをいただきしょう。サクッと揚がった衣の中から海老のジューシーなエキスが口中に広がります。次は恐る恐る海老天をスープカレーに浸して一口。

う、旨い! 天麩羅の衣にしみわたったスープカレーのコク……。エビ本体と奥芝風エビスープ、この二つの旨みがお互いを高め合い、それに追い打ちをかけるようにスパイシーな香辛料が舌を心地よく刺激してくれます。その独創的かつ強烈な味に「スープカレーに天麩羅なんて邪道では?」という固定観念は消し飛んでしまい、スープカレーの余韻を楽しむ余裕もなく一気に完食してしまいました。

「エビ味スープカレーの元祖」という地位に甘んじることなく、新しい味にチャレンジする奥芝商店。この次はどんな意表をつく味を提供してくれるのか、今から楽しみです。

【スープカレー奥芝商店 おくしばあちゃん】
営業時間 : 平日 11:00~16:30
土日は17:30~21:30も営業
定休日:  不定
住所:   札幌市中央区宮の森1条10丁目7-20
電話:   011-688-6454 
公式サイト: http://okushibaachan.wixsite.com/okushiba-cyan

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まだまだある!スープカレーの名店

さて、この他にもスープカレーおすすめの店はまだまだたくさんあります。例えば、「スープカレーの歴史」の所で「スープカレートマト味の草分け」として紹介した「木多郎」(札幌市南区澄川6条4丁目2−1 011-814-1203)や北大近くの「カレー食堂 心」(札幌市北区北15条西4丁目2-23)、「ピカンティ」(札幌市北区北13条西3丁目アクロビュー北大前1F 011-737-1600)などなど。当サイトで紹介したお店はオールアバウト記事「スープカレーの本場・札幌でおすすめ!『食うならこの店』ベスト8」でもまとめて紹介しておりますので、合わせてご覧ください。

さて、本稿をお読みいただきこの摩訶不思議な「スープカレー」なるものに関心を持っていただいた読者の皆さん。今や全国にスープカレーショップは出来ています。まずは最寄りのお店にてあなた自身の「舌と感性」で確認いただきたいのですが、この札幌生まれの「ソウル・フード」はなんと言っても札幌で食べるのが一番です。

願わくば、スープカレーを食べに札幌においで下さい。そして、地元の方々と一緒にこのスープカレーを食べながら、次のように言ってください。

「あれれ、このスープカレー、なまら美味いんでないかい!」

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