孫へ贈った1枚のブランケットから始まる物語『おじいさんならできる』

仕立て屋のおじいさんは、孫のヨゼフのために、ひと針ひと針思いを込めて、すてきな青いブランケットを縫いました。「きもちよく ぐっすり ねむれますように、こわい ゆめなんか みませんように」。おじいさんの思いが詰まったブランケットをかけられた赤ちゃんのヨゼフは、木のゆりかごの上で心地よさそうに眠っています。絵本『おじいさんならできる』は、こんなシーンから展開していきます。


毎日愛用したブランケットは、汚れてやぶれて、ブランケットにはふさわしくなくなってしまいました。「すっかり ふるくなって。もう すてましょうね!」というお母さん。でもヨゼフは自信たっぷりに言います。「おじいちゃんなら きっと なんとかしてくれるよ」。ヨゼフの言葉通り、古びたブランケットはおじいさんの手によって、ヨゼフの成長を追いかけるかのように、何度も何度も生まれ変わります。


どんな風に、何に生まれ変わっていくのでしょうか!? きっとこの絵本を初めて手に取った方も読んで聞かせてもらう子どもたちも、ワクワクしながらページをめくることでしょう。


孫の成長と共に生まれ変わるブランケット

ブランケットはまず、ヨチヨチ歩きのヨゼフのすてきなジャケットに生まれ変わります。そのジャケットを着ておじいさんと手をつないで歩くヨゼフの、何とも誇らしい顔。しかし、子どもの成長は早いのです。あっという間にジャケットは丈が短くなって……。

ここからはもう、おじいさんの腕の見せ所です。足取りもしっかりしてきたヨゼフ、気づけば、妹が誕生したようです。お母さんは赤ちゃんのお世話で忙しそう。ヨゼフは、のりや絵の具を使って遊んだり、友だちと川遊びをしたりするほどまでに成長しました。ヨゼフが活発になればなるほど、ブランケットから姿を変えた「大切なもの」は、傷みが激しくなっていきます。それでもヨゼフの口癖は変わりません。「おじいちゃんなら きっと なんとかしてくれるよ」。おじいさんの手は魔法の手なのです。


成長した孫がおじいさんに贈ったのは?

すぐに「もうすてましょうね!」と言うお母さんですが、それほど、ヨゼフの成長が著しいことを表しているのでしょうね。使える部分がどんどん少なくなった布は、どんどん形を変えて新しいものになり、最後には何になるのでしょうか? 「おじいさんの手によって、次は何に生まれ変わるんだろう」とページをめくるときのワクワク感が、この絵本の大きな魅力なので、何に生まれ変わっていくかは、ここでは内緒にしておきますね!

そして、小さく小さくなった大切なものを、何とヨゼフはなくしてしまいました。もとになるものがなくなってしまっては、いくら魔法の手を持つおじいさんでもどうすることもできません。「もうおわり、おしまい」というお母さんの言葉と、「ざんねんだけど ヨゼフ、おかあさんのいうとおりだ」と言うおじいさんの寂しそうな表情。

でも、おじいさんの心は、成長したヨゼフにしっかりと受け継がれていたのです。ヨゼフは、何もない中から、かけがえのないものを生み出し、得意げに家族の前に差し出します。物はなくなっても、心はなくなっていなかったのだということを、家族みんなが喜びの表情で見守ります。


同時展開するもう1つの物語

さて、ヨゼフの家の床下には、ねずみの家族が暮らしています。この家族たちも、最初にブランケットを作る過程、ブランケットが次々と生まれ変わっていく過程で出た布の切れ端を床下で受け止めて、生活の中で活用しているのです。

ヨゼフ自身の成長にも、おじいさんが生まれ変わらせるヨゼフのグッズにも、ヨゼフを取り巻く他の家族の模様にも、そして、次第に家族が増えていく床下のねずみたちの生活にも、作者の愛がたっぷり注がれています。

各ページに重なり合うように展開していく複数の物語は、絵本を読み終わった大人にも子どもにも、満ち足りたすがすがしい気持ちをプレゼントしてくれることでしょう。


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