いつの間にか“自分の身体の一部になる”満足度
まずは、ベースモデルのインプレッションから報告しよう。適度な張りと沈みで心地よいおしゃれなシートに身体を預けて、チルト&テレスコ機能を使って電動パワーステアリングを望みの位置にセットする。エンジンをかけ、アイドリングさせながらしばらく車内を眺める。欧州Bセグのスタンダード車にしては、静かな印象をもった。ハンドルの握り心地も悪くない。
走り始めてしばらくは、何の感想も涌いてこなかった。フツウだよなぁ、特にこれといった特徴がないよなぁ、フンフンフン、と、鼻歌まじりで転がす。インプレッションを採ることを忘れ、今夜の晩飯をどうしようか、明日の休みは何をしようか、と、頭が余所をうろうろする。
そのうち、運転している自分がとても心地よく過ごしていることに気づく。そこで初めて、「あ、これっていいかも」と感心しはじめる、というわけだ。
四肢の動きが自分の手足と腰に上手く連動するというか、思い通りに動かせているという印象が濃い。気もそぞろに運転している間に、コイツはすっかり、自分の身体の一部と化していた、というわけだろうか。
いまどき目を見張るパワートレインを積んだわけでも、最先端の電子制御システムを使ったわけでもない。スペックと仕様は、そこそこ。なのに、運転している間の満足度が、異様に高い。それこそが、ルノーらしさ、かも知れない。人とクルマの主従関係が、はたして本当に日本の道々で必要かどうかの議論は別にしても、いちクルマ運転好きとしては、その存在を有り難く思う。