ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

2014年3~4月の注目!ミュージカル(2ページ目)

少しずつ春めいてきたこの頃。3~4月に開幕する舞台から、今回は『三銃士』『サ・ビ・タ』『いただきます!』『AMTガラ・コンサート』『ゲゲゲの鬼太郎』『キャッツ』『劇団四季ソング&ダンス 60 感謝の花束』[Music Museum』をご紹介。開幕後は順次観劇レポートも追記更新していきますので、お楽しみに!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド



AMTガラ・コンサート

(2014年3月25日=アミューズ・ミュージカルシアター)

『AMTガラ・コンサート』の出演者たち(C) アミューズ

『AMTガラ・コンサート』の出演者たち(C) アミューズ

【見どころ】
13年4月に、アジアの良質なミュージカルを上演するというコンセプトのもとオープンしたアミューズミュージカルシアターが、この3月、ネーミングライツ契約終了となります。同シアターとしての最終公演として、これまで上演された韓国オリジナルミュージカルのスターたちが集結し、1日限りのスペシャルコンサートを開催。『カフェ・イン』『兄弟は勇敢だった?!』のキム・ドヒョンさん、『兄弟~』『風月主』のキム・ジェボムさん、『僕らのイケメン青果店』のキム・ナムホさんら、同シアターファンにとってはお馴染みの顔が揃います。ドヒョンさんからは「ここで皆さんと再会するには長い時間が必要かと思っていましたが、こんなに早く再会できるのが嬉しく、心躍ります」、ジェボムさんからは「ここはまるで自分の地元のようで、とても居心地がいいです。コンサートにまで出演できて大変光栄です」と熱いメッセージが。ソウルの演劇街、大学路の俳優さんたちはファンとの繋がりを大切にする方ばかりです。親しみやすいナンバーの数々を振り返りながら、大学路のスターたちとの交流を大いに楽しみましょう!

『兄弟は勇敢だった』より「俺はお前が嫌いだった」キム・ジェボム、ソン・ドゥソプ(C) アミューズ

『兄弟は勇敢だった』より「俺はお前が嫌いだった」キム・ジェボム、ソン・ドゥソプ(C) アミューズ

【観劇ミニ・レポート】
この劇場で上演された舞台のダイジェスト映像が流れ、来日した俳優たちがかわるがわる、この1年、アミューズ・ミュージカルシアターで上演された韓国ミュージカル作品を数曲ずつ披露。ほんの一部を歌うだけなのに、本編と変わらぬテンションで抱き合ったり、涙を浮かべるなど、俳優たちはいたって“本気モード”です。ほとんどが日本公演に出演した“お懐かしい顔”である中で、ただ一人ソン・ドゥソプさんは初来日。『風月主』のオリジナルキャストだった彼は来日公演参加を熱望しながらスケジュールが合わず、悔しい思いをしていたそうで、その『風月主』や『兄弟は勇敢だった?!』のコーナーで、強さの中に柔らかさのある美声を聞かせてくれました。ソウルで『シャーロック・ホームズ2』に出演中にもかかわらずこの公演のため3日間だけ休みをとり、かけつけたキム・ドヒョンさんをはじめ、俳優たちの「この劇場で僕らに声援を送ってくれたファンたちに報いたい」という思いの溢れたステージ。小粒ながらきらりと光る、大学路の創作ミュージカルと数多く出会えた場として、アミューズ・ミュージカル・シアターは観客たちの心に長くとどまることでしょう。 
『女神様が見ている』チョン・ソンウ、キム・ナムホ(C) アミューズ

『女神様が見ている』チョン・ソンウ、キム・ナムホ(C) アミューズ

昼公演終了後行われた記者会見で、「韓国の創作ミュージカルでお好きな曲は」と俳優の皆さんに尋ねたところ、キム・ドヒョンさんは『シャーロック・ホームズ2』の「推理」、キム・ジェボムさんは『風月主』の「お前の理由」、キム・ジヒョンさんとカン・インヨンさんはこの日の公演で初めて知ったという『恋の駆け引きの誕生』の「釣りソング」、ソン・ドゥソプさんは『バンジージャンプする』の「君がすべて」、キム・ナムホさんは『女神様が見ている』の「ともに旅路を」等、様々な曲が挙げられました。このうちソウルでは大評判をとった『女神様~』は、今年9月に世田谷パブリックシアターでの上演が決定。この日のコンサート出演者のうちどなたか来日版で再会できるかも?と早くも楽しみになってきました。


ゲゲゲの鬼太郎

(2014年3月26~30日=俳優座劇場、7月27日=サンシティ越谷市民ホール・大ホール)

『ゲゲゲの鬼太郎』

『ゲゲゲの鬼太郎』

【見どころ】
68年開始のアニメ版放映は未見でも、「ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲ~」で始まるあのテーマ曲は聞いたことある!という方、多いのではないでしょうか。不気味なのに親しみやすいこの風変りな歌の作曲者は故・いずみたくさん。そのいずみさんが77年に創設したミュージカル劇団イッツフォーリーズが、今回『鬼太郎』をファミリーミュージカルとして上演します。前述したアニメ版主題歌、挿入歌以外の音楽は玉麻尚一さん、脚本・作詞・演出はラサール石井さんが担当。妖怪たちのほかに人間の少年が登場し、観客が自分を重ねて観ることが出来る趣向です。「小さい子は怖くて泣いちゃうかも。(でも)夜のお墓や森が怖いのは当たり前。小さい頃にするそういう経験はとても大事なんです」とラサールさん。怖いけれどどこか懐かしい不思議体験、春休みのご予定がまだのご家族はぜひ!

【観劇ミニ・レポート】
『ゲゲゲの鬼太郎』写真提供:オールスタッフ

『ゲゲゲの鬼太郎』写真提供:オールスタッフ

アニメが原作というと、「遊園地のショーでやっているような感じのものかな?」と思われるかもしれませんが、本作はさにあらず。「ゲゲゲの鬼太郎」の要素を借りてラサール石井さんが描く、オリジナル冒険物語です。父親が事業に失敗して田舎に預けられたマサオは、権力者の息子にへつらわない、気骨ある少年。ひょんなことから妖怪の陰謀に巻き込まれ、立ち上がりつつも鬼太郎を待望するのですが、彼はなかなか現れない……。その意味が後半に分かり、「ヒーローって、自分の心の中にいるものなんだ」と胸熱くなるストーリーです。ラサールさんらしく、そこここに軽い笑いが差し挟まれているのが特色。マサオ役明羽美姫さん、九尾の狐役四條久美子さんらキャストも、キャラクターを生き生きと、ほどよいアットホーム感の中で表現しています。後半はどんでん返しにつぐどんでん返しで、決して易しい話ではないのですが、筆者の3歳の子も終始食い入るように観ていたところをみると、子供の心も引き寄せる「何か」のある舞台なのでしょう。7月27日、越谷での追加公演が決定したそうですので、今回見逃した方は、ぜひ。

 

キャッツ

(2014年4月20日~=キャナルシティ劇場) 

【見どころ】
『キャッツ』撮影:荒井健

『キャッツ』撮影:荒井健

1983年の日本初演から31年、8600回以上の上演回数を誇る劇団四季『キャッツ』が、15年ぶりに福岡に帰ってきます! T.S.エリオットの詩集「ポッサムおじさんの猫とつきあう法」を原作に、年に一度の“ジェリクル舞踏会”に集った猫たちの個性豊かな生きざまをダンスと歌で紹介する舞台は、英国での初演時「革新的」と評され、センセーションを巻き起こしました。日本版は猫のシャープな動きをさらに強調した振付(加藤敬二さん)で、孤独な娼婦猫グリザベラが「メモリー」を歌うクライマックスまで、片時も目が離せない“ジェリクル・ワールド”が展開します。うん?“ジェリクル”ってどういう意味?という方はぜひ劇場へ。猫たちの解説を聞くうち、この造語がとても魅力的に聞こえてくることでしょう。

『劇団四季ソング&ダンス 60 感謝の花束』

(2014年4月24日~7月13日) 6月4日以降のチケットは4月13日一般発売

『劇団四季ソング&ダンス 60 感謝の花束』撮影:荒井健

『劇団四季ソング&ダンス 60 感謝の花束』撮影:荒井健

【見どころ】
劇団の幅広いレパートリーから選び抜かれた名曲に新たなアレンジ、振付を加えて構成した、劇団四季の人気演目『ソング&ダンス』。今回は2013年に京都劇場で幕を開けたバージョンが、自由劇場にお目見えします。『オペラ座の怪人』『コーラスライン』『アイーダ』『リトル・マーメイド』といった海外の大作から、オリジナルミュージカルの名作『ユタと不思議な仲間たち』、劇団四季が日本語版を担当したディズニーアニメ『ノートルダムの鐘』まで、一度は聴いたことのあるあのナンバー、このナンバーが、優れたダンサーでもある加藤敬二さんの振付、演出でどう生まれ変わるか。今回は客席数500あまりの小ぶりの劇場での上演とあって、出演者の息遣いもダイレクトに伝わってくる舞台となりそうです!


Music Museum

(2014年4月26~28日=AiiA Theater Tokyo)

【見どころ】
『Music Museum』

『Music Museum』

新妻聖子さん、坂元健児さんという実力派のボーカル・バトル(?!)に、韓国のミュージカル・スター、パク・ウンテさん(『ジーザス・クライスト=スーパースター』等)らが加わったミュージカル・ショー。『ライオンキング』『レ・ミゼラブル』など、お二人が演じてきた作品はもちろん、『Dream Girls』『コーラスライン』などの名曲が次々と登場します。お二人が作品の制約のないところで、ナンバーをどう膨らませて歌うのか。パク・ウンテさんが今月、出演中の新作ミュージカル『フランケンシュタイン』のナンバーを日本で初披露したり、新妻さんと『モーツァルト!』のナンバーをデュエットするという趣向も楽しみな公演です。

【観劇ミニ・レポート】
前半は「音楽の美術館」に迷い込んだ女性(新妻さん)が、館長(坂元さん)に導かれ、様々なミュージカルナンバーに出会ううち、心の傷を癒してゆくという芝居仕立て。(演出・浅井さやかさん)。『コーラスライン』の「One」、『ライオンキング』の「サークル・オブ・ライフ」などが、それぞれの出典作品の雰囲気を残しつつも、例えば後者は「サークル」や「太陽」を大きな風船で暗示するなど、新たな演出で表現していきます。館長がふと大きな額縁にかけられた布を取り払うとその中には今回のゲスト、パク・ウンテさんが腰かけ、おもむろに『ジキル&ハイド』の「This is the Moment」を歌いだす、という趣向も物語の流れに沿っていて、違和感はありません。後半はそのウンテさんが華々しく盛り上げる『エリザベート』の「キッチュ」を幕開けとした、コンサートコーナー。新妻さんと坂元さんの“10年ぶり”という『ミス・サイゴン』デュエットなど、それぞれの持ち歌が披露されます。新妻さんと坂元さんののびやかな声は耳に心地よく、それぞれの楽曲世界を的確に表現。また男女二人ずつという、ガラコンサートとしては少なめのアンサンブルが大車輪の活躍を見せ、特に女性たち(岡村さやかさん、佐野まゆ香さん)のパワフルな歌声が光りました。今回が日本初お目見えとなったウンテさんは強い喉、『フランケンシュタイン』の「I am Monster」でも披露したシャウトを含む高音域に加えて上品さ、大きさがあり、ピンポイント登場の度に場を席捲。日本語で『モーツァルト!』の「愛していれば分かり合える」を新妻さんとデュエットし、今後さらなる日本での活動意欲もおありなのかな?と期待させます。後半の進行でちょっと気弱になった坂元さんを新妻さんが“頼れる姉貴”的にフォローしたりと、一同の仲の良さも伝わってきた今回のショー、あっという間の2時間でした。








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