アカデミー賞には、作品賞、監督賞(デヴィッド・O・ラッセル)、主演男女優賞(クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス)、助演男女優賞(ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス)が候補にあがっています。主要部門すべてに名乗りを上げているっていうのがスゴイ! そこで今回は『アメリカン・ハッスル』とオススメの詐欺師映画をピックアップしてみました。
実話ベースの詐欺師の暴走映画
『アメリカン・ハッスル』(2014年度作品)詐欺師のアーヴィン(クリスチャン・ベイル)は、野心家のストリッパー、シドニー(エイミー・アダムス)と組んで、数々の詐欺で大儲け。しかし、その犯罪がFBI捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)に知られ、捕えられてしまいます。ところFBIのリッチーは、大きな事件で手柄を立てたいあまり、アーヴィンに「自分と組まないか……」と言い出します。そして彼らは政治家を巻き込んだ詐欺事件を企むことに……。
なぜFBIが詐欺師と組むのか? あまりネタバレしたら、見る時の楽しみがなくなってしまうので詳細は避けますが、FBIと詐欺師が手を組むというだけで、胡散臭い感じがするでしょう。そう、この映画に登場する主要人物は揃いも揃って胡散臭く、全員「俺が俺が!」と前に出てくる者ばかり。これだけあくの強いメンツが主要人物に勢ぞろいしているのだから、面白くないわけがありません。詐欺映画といっても、観客を騙すような作品ではなく、この映画には、詐欺師の仕事ぶりを裏から見られる楽しさがあり、ギラギラした野心家たちの世界が、70年代を舞台にバチバチと火花を散らしているところが華やかで楽しいのです。
また役者たちの芝居も秀逸! 特に素晴らしいのは、詐欺師アーヴィンノのビッチな妻を演じたジェニファー・ローレンス。2012年度『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー主演女優賞を獲得したけど、自分は『アメリカン・ハッスル』のジェニファーの方が好きですね。ウイングスの「Live and Let Die」を歌ながら、髪を振り乱して掃除する姿、ネジ1本飛んじゃったみたいな弾けっぷりが最高! そして、脇役ながら凄いインパクトを残すロバート・デ・ニーロの怖さは、マーティン・スコセッシの名作『グッドフェローズ』を思い出させます……あのときと同じくらい怖い……。
それにしてもこんな破天荒な物語が実話ベース(アブスキャム事件を元にしている)というのに驚きますね。まさにアメリカのとんでもなさを凝縮したような話ですから。時系列が入り組んでいるので、若干わかりにくさもありますが、楽しい映画であることに間違いありません。
『アメリカン・ハッスル』(2013年度作品)
2014年1月31日、TOHOシネマズみゆき座ほか全国公開
監督: デヴィッド・O・ラッセル
出演: クリスチャン・ベイル、ブラッドリー・クーパー、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロほか
(C)2013CTMG
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