子育て事情/子育て事情関連情報

「産後クライシス回避のために育児しよう」の落とし穴

産後クライシスのメカニズムと意味を説く「間違いだらけの産後クライシス論争」第5弾。妻が夫に対して肯定的感情を抱きにくくなるのは産後すぐである。まだ父親としての実感も湧いていないタイミングで、取引の文脈で育児や家事を迫られれば、子どものために、妻のためにという純粋な動機はたちまち摘み取られてしまう。育児や家事に対して「やらされるもの」というネガティブなイメージを刷り込まれることになるだろう。

執筆者:おおた としまさ

子育ては産後クライシス回避のためにするもの?

産後クライシス

産後クライシスは回避ではなく乗り越えるもの

まず男性に聞きたい。
「ちゃんと育児や家事をやってくれなかったら、あなたを愛するのをやめるからね」と言われたら、どんな気持ちになるだろうか。“取引”と受け取るのではないだろうか。少なくとも前向きな気持ちにはなれないだろう。

妻が夫に対して肯定的感情を抱きにくくなるのは産後すぐである。正直、まだ父親としての実感も湧いてきていないタイミングで、“取引”の文脈で育児や家事を迫られれば、「子どものために」「妻のために」という純粋な動機はたちまち摘み取られてしまう。代わりに、育児や家事に対して「やらされるもの」というネガティブなイメージを刷り込まれることになるだろう。

次に女性に聞きたい。
「あなたは、“産後クライシスによる夫婦関係の破綻を回避する”ために、夫が育児をすることを本当にうれしいと思うだろうか?」そんな動機で子育てをされてもうれしくはないだろう。

そもそもいつから育児は、産後クライシスを回避するために“しょうがなく”行うものになったのだろうか。子どもがかわいいから子育てをするのではないだろうか。妻のことを愛しているから、家事も頑張ろうと思うのではないだろうか。

育児も家事も妻に押し付けっぱなしという夫が多いことは、私もよく知っている。そのような男性をかばう気はない。しかしだからといって、「産後クライシスによる夫婦関係の破綻」を“取引”の道具として利用して、育児や家事をやらせたところで、妻だって満足は得られないだろう。
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