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出産の事故に備える「産科医療補償制度」が拡大へ(2ページ目)

産科医療補償制度とは、出産の際、なんらかの事情で赤ちゃんが脳性まひになった場合、一定条件を満たせば3000万円まで支給される制度です。2014年1月には、翌年1月から補償対象が拡大されることが決定。今後の動向が注目されます。

拝野 洋子

執筆者:拝野 洋子

ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士 / 年金・社会保障ガイド

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産科医療補償制度が始まった背景は?

2009年1月から産科医療補償制度が始まり、今年で6年目になります。2008年当時、医師1000人あたりの訴訟件数は、内科医2.5件に対して、産婦人科医は9.9件と飛び抜けて多く、深刻な産婦人科医不足やお産難民を招きました。

深刻な分娩機関の減少に歯止めをかけるために、医師の責任を問わずに患者に経済的な補償を行う無過失補償制度の設立を求める声が上がり、2009年1月に産科医療補償制度が始まったのです。

分娩中の事故などで子どもが脳性まひなどの障害を負った場合、速やかに補償することで、産科クリニックや助産院など分娩機関の負担を軽減することも目的でした。

集めた保険料が余り過ぎているという問題も

2009年1月、産科医療補償制度の設立当初、補償対象になる重度脳性まひ児は年間500~800人くらいだろうとの予測でした。1人出産につき保険料3万円が徴収されていますが、これまで実際に補償されているのは211人(2013年8月時点)。予測の半分以下の人数です。産科医療補償制度の存在が知られていなくて、申請漏れも多いようなのです。

そのために集めた保険料の剰余金は毎年約130億から200億円とも言われ、去年末の時点で約1000億円の剰余金が積みあがっているとみられています。2013年5月には産科医や妊産婦が、国民生活センターに掛け金返還を求める和解の仲介申請を行うまでに至っています。

産科医療補償制度の対象が2015年1月から拡大へ

産科医や妊産婦による保険料返還の動きがある一方で、補償対象となった子どもの親9割が「制度があって良かった」と感じていて、2006年は161件だった訴訟が、産科医療補償制度が始まった2009年は84件、2012年は59件と減少しています。

保険料の引き下げや剰余金の返還などを求める声を受け、2014年1月、来年2015年から補償対象が拡大されることが決まりました。原則、体重1400グラム(現在は2000グラム)以上で32週(現在は33週)以上に生まれた赤ちゃんが対象となります。また、保険料も現在の3万円から減額される見通しです。

個別に審査する対象は、これまで通り在胎28週以上とし、補償金額も600万円の一時金と、年120万円を20年間の計3000万円のまま変更しない方向です。

在胎28週以上で所定の要件を満たしていた場合であれば、個別に補償の審査対象になります。2009年以降の出産でお子さんが「脳性まひでは?」と思う方は、母子手帳などを持参し、まず出産した分娩機関やかかりつけの小児科医に相談してみましょう。産科医療補償制度コールセンター(0120-330-637または03-5800-2231)に問い合わせてみてもよいでしょう。

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