投資信託/要注意!投資信託のリスクと落とし穴

毎月分配型ファンドの安定分配が崩れる日

投資信託の分配原資について規制を掛けるという話が浮上したのは、今から2年前の2012年1月でした。毎月分配型ファンドの分配金原資を、運用益に限定するというものでしたが、その後、全く規制強化の動きは見られません。投資信託業界のロビー活動の成果なのかどうかは分かりませんが、この手の規制がなくとも、毎月分配型ファンドの安定分配は、近々崩れる時が来そうです。

鈴木 雅光

執筆者:鈴木 雅光

投資信託ガイド

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ファンド分配金の規制はその後、どうなったのか

そもそも2年前、大手経済紙が1面トップで報道した内容は、その当時、人気を集めていた毎月分配型ファンドや通貨選択型ファンドに対して、一定の規制をかけるというものでした。

しかしその後、どういうワケか、この時打ち上げられた規制の話は一向に進展したという話を聞かないまま、2年の歳月が流れました。約1年間の協議の後、2013年の通常国会に投資信託法の改正案を提出するという内容でしたが、結局のところ改正案の中に、毎月分配型ファンドの分配原資に関する規制は盛り込まれなかったということなのでしょう。

もし、規制が実施されたら、分配原資は運用益に限定されるはずだったので、どの毎月分配型ファンドも、減配という事態に直面したはずです。ちなみに、毎月分配型ファンドの代表的な存在である「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」を例に挙げると、2013年11月決算時点の分配原資は、次のようになります。

・期中収益に該当する部分=15円
・期中収益に該当しない部分=62円(分配準備積立金) 303円(収益調整金)


これによって、決算前分配対象金額は、合計で379円ということで、ここから35円の分配金が出されています。

ちなみに期中収益に該当しない部分としてカウントされている分配準備積立金、ならびに収益調整金とは、簡単に言えば過去の運用によって得られた余剰利益をプールしたもので、純粋に前回の決算から今回の決算までの間に得られた運用益ではありません。ということは、もし規制が行われていたら、分配原資は運用収益に限定されますから、35円の分配金を継続的に出す余裕はどこにもなく、せいぜい15円前後の分配額に止まることを意味します。

ということで、規制が行われずにほっとしている投資信託会社もあると思いますが、徐々に分配準備積立金や収益調整金が目減りしてきており、このまま放っておいても、分配金をかさ上げしてきた要因は、いよいよ消滅する直前にまで来ているようです。

たとえばグロソブの期中収益に該当しない部分の額は、2013年11月決算時点で365円。過去、毎月分配金を支払うごとに20円前後ずつ、目減りしています。簡単に考えれば、今の35円分配を維持し続けた場合、あと18か月もすれば、「期中収益に該当しない部分」の分配原資は、底を尽くことになります。そうなったら、35円という今の分配金額を維持するのは、さすがに難しくなるでしょう。

ピーク時には5兆円をはるかに上回っていた同ファンドの純資産残高は、1月時点で1兆3000億円台まで減少しています。近い将来、分配金の減配が現実問題になったら、ますます資金流出が加速する恐れがあります。

それにしても、かつてはわが世の春を謳歌していたファンドが、一気にここまで激しい資金流出に見舞われる現実を見るにつけ、投資信託の販売を担っている販売金融機関が、いかに目先の手数料稼ぎで投資信託を販売しているか、ということがはっきり分かります。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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