住まいのプロが提案「イエコト」/プロが提案!住まいのヒント

2050年の住まい~アメリカ高齢者の元気を支える家(2ページ目)

広くゆったりとした住まいで豊かに暮らすアクティブシニアのイメージが強いアメリカ。あれだけの人口を擁していながら、高齢化や介護住宅の問題は日本ほどには問題になっていません。なぜアメリカではアクティブシニアが多いのか、日本が参考にすべきポイントを「住まいとコミュニティと意識」の視点で考えてみたいと思います。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド


木村氏

アメリカ在住でアクティブシニア社会を語る木村徳子氏

先日「米国ではなぜアクティブシニアが多いのか」というセミナー(主宰:輸入住宅産業協会、後援:町田ひろ子アカデミー)が開催されました。現在アメリカ・コロラド州在住で町田氏の双生児・TOKOコンサルタンツ代表・木村徳子チェイピン氏が来日し、自身が住むコロラドのアクティブシニアについて紹介しました。

木村氏は、コロラド州のゲーティッドコミュニティ「アローヘッド」にご主人と住み、冬はスキー、夏はゴルフ、ヨガやピラティスなどを愛するアクティブ派の一人。

60-70代でも「冬はスキー、夏はゴルフ」ライフ

自然

住まい、趣味、ライフスタイルすべてが自然をベースにしている(写真協力:輸入住宅推進協会)

ゲートで囲われているとはいえ、アローヘッドの総面積は約287.6万坪(東京都4つ分!)。中には一般客も利用できる広大なゴルフ場やスキー場、レストラン、ハイキングコースや湖などがあり、住宅が1260棟建築されています。もちろん、住民の安全を管理するパトロールも常時循環しています。

木村氏はこのゲートコミュニティの中で、何度か住み替えたとか。まずスキーに遊びに来て夏も滞在するので広めのシーズン・ロッジを買い、そこで住み続けたくなって戸建を買いました。「このゲートシティは、そういう住み替えにも対応できるマスタープランニング(環境開発計画)が最初からできている。これこそシニアの愉しみ」と木村氏。

ホームシアター

近所住民や孫たちを呼ぶことを想定してつくられた広いホームシアター

スキー場まで歩いて10分、ゴルフは歩いて5分、犬の散歩はハイキング気分で。すれ違った人と笑顔で交流したり、自宅に呼んでランチやディナーを楽しんだり、ワイングラスをもって庭やゴルフ場でパーティしたり。

木村氏と町田氏は、コロラドと日本を比較して、豊かなアクティブシニアライフに必要な要素として以下を挙げました。

1.すべて徒歩圏でアウトドアや多様なスポーツを楽しめる
2.健康で前向き志向の人が集まってくる
3.同じ趣味を介して知り合ったコミュニティが築かれる
4.スポーツだけでなく、仲間と一緒に学べるコミュニティカレッジ。多種多様な人種が一緒に学ぶことで刺激も。
5.住まいはシニアの趣味。個性の表現の場をパーティで見せ合うことで活力。
6.シニアこそダウンサイジングでなく「enlarge sizing」

老後の住まいこそダウンサイジングでなく逆

キッチン

キッチンも近所住民や孫ファミリーが来ることを前提とした広さ。皆でキッチンに立つのが楽しみ(写真協力:輸入住宅産業協議会)

興味深かったのは、アローヘッドの家は6ベッドルームなのにシニア夫婦2人で住んでいること。それには理由があり、自分たちの息子娘夫婦や孫たちを呼ぶことが何より楽しみ。小さな孫たちは山や川、マウンテンバイクやスキーができるのでここが磁石になっている。

「日本は反対。老夫婦だからどんどん家をダウンサイジングしていくことで、余計に近隣や子ども家族を退けているのではないか。これがアメリカの新しいアクティブなシニア家族の在り方」と町田氏は言います。

これらは何も富裕シニアだけの特権ではないところがアメリカ。しかし、アメリカに学ぶべき点は多いと思います。日本が高齢社会を元気に乗り切っていくには、こうした住まいのハードだけでなく、環境やライフスタイル、知事や孫とのつながりの仕掛けが必要なのではないでしょうか。
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