ああ正負の法則(1)
『ああ正負の法則』は2002年にパルコ出版から発表された本ですが、およそ21世紀の本には見えないクラシックなデザインで、美輪様の美意識を感じさせます。人並み外れた人生を送ってきた美輪様だからこそ到達しえた、世界と人生の道理が書かれています。ちょっとずつ抜粋してみたいと思います。
出だしはこうです。「この本は、<心><魂><精神>の<修業><修練><試験場>である地球学校の、試験問題の答案早見表です」地球は陰と陽、正と負、相反する二つのもので成り立っている。それが正負の法則です。
地球は魔界と天界の境界線に浮いている場所。両方が縄張り争いをしています。魔界の<負>の部分と天界の<正>の部分を上手に、自分自身で納得して、両方のバランスをとりながら保ちつづける、それが長生きする方法です。「なんてやつだ」と思ったりすることがあっても「これは魔界族なんだ、自分たちとは違う種族なんだ」と思えば、腹も立ちません。
幸福とは充足感のこと。何もかも満ち足りた気分になった時が幸福。しかし、その成分は泡です。『青い鳥』で表現されているように、手にした瞬間、飛び去ります。もしその幸福感が持続したら、しまりのないボケーっとした「うすらバカ」になるでしょう。しかし、いつでもどこでも、幸福になる方法があるのです。それは、感謝するものをまわりに見つけることです。
肉親をはじめ多くの人に愛されてきた人は、愛されることの嬉しさ、ありがたさが当たり前だと思い、幸福に鈍感になっています。また、わかりません。しかし親にも他人にも愛されずに育ってきた孤独な人は、誰かからほんの少し優しくされただけでも、大変な喜びを感じたり、ありがたみを、また幸福感を味わうことができるのです。
ここまでが「はじめに」です。ようやく第一章「自分自身の<正>と<負>を知る」に入ります。
自分の<負>は何であるかということをよく見て査定しておくことが大切です。自分は病気ばかりで<負>ばかりだと思っている人がいるが、そういう人が愛情に恵まれていたり、豊かな暮らしをしていられる(<正>を持っている)場合もあるのです。
楽あれば苦あり。むやみにうらやましがることはありません。<正負の法則>を知っていれば、ねたんだり、うらやんだりする必要がなくなってきます。「人間は必ず平等にツケを払わなければなりません」
肝心なのは、悪いことが起きたからといって嘆き悲しむ必要はないということ。悪いことは長くつづきません。良いこともまた長くはつづきません。だから、良いことがあったときは、そこそこの<負>を先回りして自分で意識してつくるとよいのです。仏教の「施餓鬼供養」という施しの行はそういう意味です。「情けは人のためならず」「損して得しろ」です。