どんな空が好きですか? 色々な表情の空が登場する『きょうのそらはどんなそら』
「どんな空が好きですか?」と尋ねたら、きっと十人十色、色々な答えが返ってくるのでしょうね。一日が動き出す前の白々とした夜明け空、雲一つなく澄み渡った青空、バラエティに富んだ雲がたくさん浮かぶ青空、夕日とのコントラストの中の暗くなりつつある空、くっきりとした月が浮かんだ夜空……。しっとりとした空気におおわれた雨空が好きな方もいるでしょう。皆さんは、「空」と聞いて、どこのどんな空を思い浮かべるでしょうか。絵本『きょうのそらはどんなそら』の作者は、ふくだとしおさん・あきこさんのご夫婦ユニット。お2人の中にある「空」によって生まれた絵本です。人生を見守る空
嬉しい時、楽しい時、落ち込んだとき、苦しい時……。様々な感情にまみれた毎日が繰り返される中で、ふと、空を見上げると、自分の気持ちとは関係なく淡々と広がる空に、心が包まれます。小さな子どもたちは、空を見るのが大好きですね。空を見上げてどんなことを感じているのでしょうか。私は幼いころ、雲が動いていることに気づいた感動を、今でも覚えています。3~4歳の頃だったようですが、兵庫県の自然に囲まれた親戚宅に遊びにいき、何気なく空を見上げていたときでした。「雲は空に張り付いているんじゃなくて、別々で、動くものなんだ!」。そんな当たり前のことに気づいた瞬間。その後何十年もたちましたが、その時の感動は、空に対する思いの原点になっているように感じます。この絵本の作者の2人も、幼いころに見た空への思いを巻末で綴っています。
私が大好きな函館の空です。
空をたくさん見上げよう
この絵本では、1匹のあどけない顔つきをした猫が、様々な表情の空を見上げます。どのページでも、しっぽも耳もピンと上を向いています。きっとこの猫は、どの空も大好きなのでしょう。猫と、猫によく似た形の雲が、傾いてきた太陽を感じながら見つめ合います。日々自然が作り出す空は、同じものは1つとしてありません。都会の慌ただいし空気の中でも、ふと見上げた空は、毎回違う表情を見せてくれます。日々の暮らしも、人によって、日によって、同じものは1つとしてないように。『きょうのそらはどんなそら』を読み終わった時、「もっと空をたくさん見上げよう」という作者の声が聞こえてくるような気がしました。