戦略に求められる短期、長期の両立
日産自動車の「戦略」的流れから見てみましょう。バブル経済崩壊後の90年代後半に、日産自動車は製品面での評価を落とし経営危機に陥りました。その危機を資本提携先ルノー社から乗り込んで立て直したのが、カルロス・ゴーン現CEOです。彼は「日産リバイバルプラン」をぶち上げ、主力の村山工場の閉鎖をはじめとした大胆なリストラ戦略を断行。同社は見事なV字回復を果たします。これは同社における「出を減らす戦略」でした。短期的には爆発的な効果を発揮させることが可能なこの「出を減らす戦略」ですが、企業が長期的な成長曲線を描くためには適切な「入りを増やす戦略」の導入が不可欠になります。コストカットと並行してゴーン氏の下で描かれた同社の長期戦略は、時流を先読みしエコ路線を突き詰めたエコカー戦略「EV車(電気自動車)戦略」でした。
他方、トヨタ自動車のバブル経済崩壊以降はと言えば、お家芸とも言える無駄排除の「出を減らす戦略=トヨタかんばん方式」の徹底により一層の経費削減を進めるとともに、日産と同様にエコをキーワードにした「入りを増やす戦略」が模索されます。しかし同社の「入りを増やす戦略」は、より現実路線を歩む「ハイブリット車戦略」がその中核に据えられ、90年代後半にはいち早く主力車種プリウスが市場投入されたのです。
まだまだ絶対数が不足のEVスタンド
「戦略」策定においては、短期決戦的「出を減らす戦略」と長期的視野に立った「入りを増やす戦略」の両立が不可欠です。前者が立たなければ後者には行き着かず、前者が立っても後者が立たないなら息切れ必至です。この観点で申し上げるなら、現状の日産自動車は長期「戦略」の見直しを迫られている状況にあると言えるでしょう。