里親のための、より専門的な相談受け入れ態勢
里親家庭での信頼関係が、里子の生きていく力を支えることを願って。
しかし日常の悩みについては、里親どうしでは気兼ねして言いにくかったり、児童相談所に対しても、里親としてきちんと育児ができていないと思われるのではないかと相談しにくいことあるかもしれないと、児童相談所側は推察しています。
一方、子どもが抱える問題も大きくなっています。厚生労働省のまとめでは、児童養護施設に入所している子どものうち、半数以上は虐待を受けた経験がある子どもで、23.4%が発達障害などの障がいがあると診断されています。子どもの頃に実の親による虐待を受け、児童養護施設で育った50代の女性は「信頼できる大人がいる家庭で育つ体験ができれば、自分の子育てにも前向きになれたかもしれない」と振り返り、「虐待を受けた子どもをもっと里親家庭に」と訴えました。
難しいケースに対応できる里親が増えなければ、制度を広げることはできません。そのためには、やはり、里親のためのより専門的な相談窓口が求められます。国は、平成23年度から児童養護施設や乳児院などに「里親支援専門相談員」の配置を始めました。里親家庭からの相談に対し、訪問を含め様々な形で対応しています。地域に里親制度への理解を広める活動をするなど、里親支援に特化した役割も担います。北海道では、道立の19施設中、5施設に配置されているということで(政令指定都市の札幌市を除く)、今後の広がりが期待されています。
※レスパイトケアとは
里親が心身的負担を感じて休息を取りたい場合や、用事で里子を一緒に連れて行くのが難しい場合など(例えば法事など)に、児童相談所などで預かる制度。
そもそも二重の親子関係が必要にならないために……
野崎課長は、「保護が必要な子どもの中でも、実の親がいずれ一緒に暮らしたいと思っているケースが圧倒的に多い」と話します。また、親による虐待などが子どもの年齢が高くなってから発覚するケースも増えていると指摘します。実の親が育てられない段階にまで行ってしまう前にSOSを発することができる地域の相談体制、悩みを共有できる地域の場づくり、母親の妊娠中からのフォローなど、各分野の連携を強めていくこともまた、差し迫った課題として求められているようです。
最後の記事では、短期の養育里親として、実の子どもたちとともに里子を育てている具体的ケースの中で、里親制度の持つ課題、地域の役割について考えてみます。
⇒里子・里親・実親を支えるために地域ができることは?
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【参考資料】
・「社会的養護の現状について」平成25年3月版 厚生労働省