地域の力も不可欠な里親の支援

里親制度の持つ役割は、実の親が様々な事情で子どもを育てられない期間、代わって子育てをするだけではありません。里子として育てている子どもは、いずれ実の親の元に戻ったり、児童養護施設での生活を送るようになったり、成人して里親家庭から自立したりするなど、ケースは様々です。

里子の成長や生活の変化を長い目でとらえてどのような形で支えていくか、里親家庭や実の親への支援体制をどうやって充実させていくか、児童相談所もより良い形を模索し続けています。短期の養育里親として、実の子どもとともに里子を育てている1つの里親家庭のケースの中で、里親制度の持つ課題、地域での役割について考えました。

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4人の兄姉たちに囲まれて育つ里子のBちゃん

北海道在住の40代のAさん。小学生から高校生までの4人の実子とともに、生後2ヵ月で預かった里子のBちゃんを育てています。Aさんの役割は、短期の養育里親。体調不良が大きな要因で子育てが困難な状況の母親の子どもを、半年~1年程度預かるという条件で、初めての里親としての生活がスタートしました。預かってから既に1年を超えましたが、実の母親の体調がまだ安定しないため、引き続き1歳を過ぎたBちゃんを家族同然に育てています。

里子と実親の関係作りに……積極的に地域のつながりの中へ

親子の集いの場

親子の集いの場でBちゃんは、ふれあい遊びや工作、お菓子作り体験などを、里親・実親の両方としています。

Aさんは、地域の親子イベント、交流の場などにも積極的に参加し、そこに参加する他の母親たちも、AさんとBちゃんの関係を自然に受け入れています。そういった場に、Bちゃんの実の母親が参加する機会が何度か持たれ、Bちゃんの母親は、Bちゃんが慣れ親しんだ地域の交流の場で、少しずつBちゃんとの関係を築きつつあります。Aさんは、Bちゃんが実の母親と交流する様子を見守りながら、「無理のないペースで、自分で育てられるという自信をつけていってほしい」と願っています。

里親制度の最終的な目標は、可能な限り、実の親が育てられるように体制を整えていくことにあります。Aさんの家族全体がBちゃんの乳児期からの成長を見守り続けてきた中、Aさんは、いずれ来る別れを覚悟したうえで、Bちゃんを実の妹のように思っている我が子たちへの精神面のフォローも感じ始めているそうです。

実子でも里子でも、悩みがつきものの子育て
大切なのは様々な家族の形への理解

子育てがひと段落した50代以上の人がなることも多い里親の中で、Aさんの年齢は乳幼児を育てる母親たちとも近い位置にあるため、地域の母親たちとの交流もスムーズに感じるそうです。

自身も4人の子育てをしてきたAさんは話します。「自分も、子育てをする中で、少しずつ“親”になってきました。また、里子のこの子と地域のつながりの中に身を置くことが、この子を育てる上でも大きな助けになっています」。

血縁関係を重視する日本社会の中では、まだまだ里親制度が地域に自然に受け入れられていく環境とはいえません。しかし、実の子どもであれ、里子であれ、子どもを育てていくのに悩みは常につきもので、地域のつながりが支えになる場面もたくさんあります。里親家庭が地域の中で里子を育て、いずれ実の親の元に戻った子どもが親子で地域の中で暮らしていくことができるためには、様々な家族の形が存在することを、周囲が理解して見守り、同じ立場で一緒に子育てをしていくことも必要なようです。

実の親の子育てが途切れないために

「Bちゃんと私たち家族が一緒に過ごせている今の時間を、家族みんなで大切に感じながら、Bちゃんには、私たち家族が記憶に残らないうちに実のお母さんのもとに戻れるようになってほしい」と、Aさんは話します。

様々な事情で実の親が育てられずに里親家庭で生活することになった子どもたちは、背景も、適応の仕方も、その経験をさらに成長してからどう受け止めるかも様々です。こうしたらうまくいくというマニュアルはありません。そもそも実の親による子育てのスタートを支え、その子育てが中断しないようにするために、子どもが生まれる前からフォローすることも重要です。具体的には、妊娠中の母親の心身の状態や、妊娠経過、家庭環境などを、妊婦健診や保健師による訪問などできめ細かく見ていくことなどが挙げられるでしょう。しかしこうした行政の支援だけでなく、ご近所のつながり、子どもの育ちと子育ての不安を社会全体で支えていく地域の力も、今一層求められているのかもしれません。


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