戸籍は移さずに預かって育てる「里親制度」
特定の大人との強い信頼関係を築く体験ができるというメリットが重視される里親制度
実際に里親をされている方の中にも、「自分が里親制度に関心を持つまでは、子どもがいない夫婦が、様々な事情で実の親が育てられない子どもを引き取って育てている」というイメージを持っていたという方もいます。
実際にはそれだけではありません。実子がいる上で、預かった子ども(里子)を実子と兄弟のように一緒に育てる里親や、虐待を受けて心にダメージを負った子どもなどを預かる「専門里親」、親族が受け入れる「親族里親」など様々なケースがあります。
里親制度は、特別養子縁組のように戸籍を移して自分の子として育てるのとは違います。里子と実の親との親子関係は残したまま、一時的あるいは大人になるまで預かるのが里親制度です。児童養護施設などでの生活と異なり、家庭の中で家族の一員として育つことで自分なりの家族像を持つことができ、特定の大人との強い信頼関係を築く体験ができるというメリットが重視されています。東日本大震災で保護者を亡くした子どもが多く出たことを受け、法律が一部改正されるなど関心が高まっています。
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古くは平安時代から……戦後に制度化された日本の里親制度
「自分の子どもを他人に預けて育ててもらう」という形の「里親」という言葉は、平安時代から存在するそうです。明治・大正時代には、里親による里子への虐待も問題化するようになりました。第二次世界大戦後は、戦争で身寄りがなくなった子どもや、貧困のため子どもを養育できない家庭が激増し、このような子どもたちをどうやって保護するかが差し迫った課題となります。そのような中、1947(昭和22)年に児童福祉法が制定され、同法に基づいた「里親制度」がスタートしました。現在、親の病気や死亡、離婚、経済的事情、保護者からの虐待により子どもの保護が必要になった場合など、実の親による子育てが困難になった場合、0歳から18歳の子どもが育つ環境は大きく分けて2つあります。1つは、乳児院や児童養護施設での集団生活、もう1つは、里親家庭に引き取られて家族同然に育てられる里親制度です。その中間には、施設の支援をもとに住宅で職員が養護を行うグループホーム(定員6人)、養育者の家で里子を複数預かるファミリーホームといった形態もあります。
>>里親には色々な形があります。