綿の城パムッカレで足浴と古代都市に浸る
大地から湧き出した温泉に含まれる炭酸カルシウムが、険しい崖に美しい棚を作り出す。棚をなでる水の流れはアナトリア高原の冷たい大気に触れて白い蒸気を立ち昇らせて、棚は風に吹かれるまっ白な綿花のように、幻想的に揺れ踊る。綿(パムック)の城(カレ)、パムッカレ。お伽の国のお城のようなこの土地を、人々は紀元前の昔から愛し、神秘的な景観と温泉の効能から、聖なる都ヒエラポリスと呼んで敬った。今回は、自然と文化が融合したトルコの複合遺産「ヒエラポリス - パムッカレ」を紹介する。
温泉とお風呂の国トルコとふたつの複合遺産
パムッカレの石灰棚。長い年月をかけて少しずつ成長を続ける大自然の神秘的な造形 ©牧哲雄
一面に広がる石灰棚。上部の棚の水ほど温かく、かつてはローマ皇帝もこの湯につかった ©牧哲雄
たとえばトルコにはハマムと呼ばれるサウナ風呂がある。トルコ人はこのハマムがとても好きで、どの街に行ってもトルコの人々に混じってこのハマムを楽しむことができる。
また、温泉があちこちに湧いているのもトルコの特徴だ。トルコは地中海と黒海に囲まれた小アジア半島に位置し、半島の中は高原が広がっている。日本と同じようにプレートの活動が盛んで、火山や地震活動が活発である代わりにアナトリア高原のあちこちから温泉が湧き出す。
約2万人を収容したというヒエラポリスの円形劇場 ©牧哲雄
トルコの奇観といえば奇岩群で有名な世界遺産「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群」。カッパドキアはパムッカレからバスで約10時間の位置にある。カッパドキアもやはり火山やプレート、風雨が作り出した大自然の景観なのだが、その奇観からか人々は太古の昔から宗教施設を建設し、神に祈りを捧げていた。
パムッカレとカッパドキアは、ともに世界でたった35件しか存在しない複合遺産として登録されている。