伝統あるブルーチーズ!フランス産「ロックフォール」
「チーズの王」、または「チーズの皇帝」とも称される「ロックフォール」。その堂々とした存在感は、数あるチーズの中でもとりわけ光っているのではないでしょうか。比類のないしっかりとした旨み、塩味や風味の深さ、滑らかな舌触りと口どけには独特の風格があります。その美味しさゆえ、昔から模倣品が出回ることも多く、15世紀、シャルル6世はロックフォール村の人々が独占的にロックフォールを製造・熟成することを許可し、シャルル7世の代には、模倣品を作った者を罰する法律も制定されました。
そして近現代の1925年、チーズとしては初めてのAOCに認定されました。数百年の昔から法律によって産地、製法、品質が守られてきたロックフォール。そんな素晴らしいロックフォールについてご紹介します。
基本データ
- 名称:ロックフォール(Roquefort)
- タイプ:青かびタイプ
- 原産地:フランス、 ミディ・ピレネー圏
※熟成指定場所:アヴェロン県、ロックフォール・シュル・スールゾン村の洞窟
- 原料乳:羊乳(無殺菌乳)
- 熟成期間:最低3か月
- 固形分中脂肪分:最低52%
- 出荷時の大きさ・形・重量:直径19~20cm、高さ8.5~10.5cm、重さ2.5~2.9kg(円筒形のものを半分にカットし、半円筒形の状態で出荷)
- 旬:秋から春にかけて(1年を通して入手はできる)
- AOC(原産地呼称統制)取得年:1925年
どんなチーズ?
フランス南部のミディ・ピレネー地方、ロックフォール・シュル・スールゾン村近辺で作られ、ロックフォール・シュル・スールゾン村の洞窟内で熟成される、羊乳製青かびチーズ。チーズには皮が無く、表面はベタベタとしている。ベースになる生地はアイボリー色でとてもなめらか。しっとりしていているが、もろもろと崩れやすい。断面を見ると、内層にはぽこぽこと穴が開き、その穴にはビロードの様な青~緑色の美しいカビが生えている。味わいは強く濃厚で、塩味、旨味がしっかりとした中に、青かびのシャープな刺激も。舌触りはバターの様になめらかでクリーミー。味わいの余韻は長いタイプ。
名前の由来
ロックフォールを熟成する洞窟がある、ロックフォール・シュル・スールゾン村(Roquefort-sur-Soulzon)の名前から。「ロックフォール」を名乗るためには、必ずここの洞窟で熟成させなければいけません。起源
2000年以上の歴史を持つと言われるロックフォール。その起源については、ちょっとロマンチックな言い伝えがあります。昔々、美しい女性を見かけた羊飼いの青年。持って来ていたパンやチーズを洞窟に置いたまま、羊もほったらかして、女性について行ってしまいました。暫らくして青年が1人で戻ってきたところ(残念!)、パンもチーズもカビだらけ。そうは言ってもお腹が空いてたまらなかった青年がそのチーズを口にしたところ、なんとも言えず美味しくて……。その時チーズを置きっぱなしにしたのが、ロックフォール村のある、コンバルー(combalou)山の洞窟。そして、ロックフォールが生まれたと言われています。
製法
羊が出産のピークを迎えるのが12月。産後1か月ほどは赤ちゃん羊にミルクを飲ませ、その後の乳を使ってロックフォール作りがスタート。法令で定められた周辺地域のみからミルクを集め、搾乳終了後48時間以内に凝乳酵素を加えてカード(凝乳)を作る。
その後カードを約1.5cm角にカットし、攪拌しながらカードの中の水分を抜いていく。カビを混ぜつつ型に入れてさらに自然に水分を抜き、4日前後で型から出す。
直接塩をまぶして加塩後、ロックフォール・シュル・スールゾン村の洞窟へ。洞窟内で約2週間ほどかけてカビを育て、良い頃合いになったら、カビの成長を止めるため、錫箔に包んで空気と光を遮断。
その後、洞窟内で静かに最低3か月の熟成を経て出荷されます。
なお、ロックフォールの製造は、羊がミルクを出す冬~夏のみ。その時期に作られたロックフォールが十分な熟成を経て美味しくなるのが秋以降。という訳で、ロックフォールは秋以降が旬のチーズと言われています。
ロックフォール・シュル・スールゾン村の洞窟
フランス南部、ミディ・ピレネー地方に位置する、人口700人にも満たない小さな村“ロックフォール・シュル・スールゾン(Roquefort-sur-Soulzon)”。ロックフォールを名乗るためには、全てこの村の洞窟で最低3か月熟成後、出荷されないといけないと決められています。その理由は、もともとの起源がこの村だったという事もありますが、大切な要因が2つ。まず1つめは、この洞窟に自然に存在していたチーズに最適な青かび、「ペニシリウム・ロックフォルチ(Penicillium Roqueforti) 」がこの洞窟に自然に存在していたこと。このカビ無しでは、ロックフォールは生まれませんでした。
2つめが、「フルリーヌ」。 フルリーヌとは、洞窟内を流れる風。洞窟がある岩山のコンバルー山にはたくさんの亀裂があり、その亀裂から流れ込んだ外気がフルリーヌとなります。そのフルリーヌのおかげで洞窟内は1年を通して熟成に最適な湿度と温度が保たれるのです。
ワインや他の食材とのマリアージュ
合わせるワインの王道は、ソーテルヌ等の甘口デザートワイン。また、デザートワインほど甘くなくても、ほんのり甘さのある白ワインとも好相性です。さらに、ボリュームと凝縮感のあるフルボディの赤ワインとも良く合います。塩気の強いロックフォールは甘味との相性が良いので、蜂蜜やドライフルーツ、ドライフルーツ入りのパンやチェリージャム等もお勧めです。他にはチコリやクルミ、洋梨とも合わせることが多いチーズです。ロックフォールの美味しい食べ方
カットしてそのままワインと共に。もちろん、バゲットやドライフルーツ入りのパンにのせていただいても美味。さらにその上から蜂蜜をたらしたり、ジャムやドライフルーツ、ナッツを添えてもより美味しくいただけます。また、クルミと共にチコリの上にのせてオードヴルにしたり、サラダに混ぜたり、ソースに溶かしてグリルした肉にかけたり……と、料理に使うのも定番です。チーズの中でも別格の完成度と存在感を誇るロックフォール。強い個性があるので苦手な方も多いかもしれませんが、それでも色々と食べているうちに突然その美味しさに目覚めたり、状態の良いものに出会ったり……、という事もよくあります。
ぜひ、ワインのおともに、お料理のアクセントに、パーティーにといろいろ試して楽しんでみてください。
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