行政書士試験/行政書士のキャリア・開業

資格取得後の独立体験記 第17回「大学院への道」

協議離婚書作成業務で苦悩した私は、解決の道を模索し始めます。行政書士には様々な制限があり、弁護士のようにはいきません。しかし、文献を読んでいるうちにある制度に行きつきます。そこで、一大決心をすることになります。

山本 直哉

執筆者:山本 直哉

行政書士ガイド

はじめに

行政書士として独立開業して5年。当時の主たる業務だった離婚業務で、多くの不条理を目の当たりにし、苦悩の日々を過ごしていました。しかし、考えをめぐらしても、行政書士には様々な制限があり、解決の糸口は見つかりません。

行政書士という制限の中での発想の転換

行政書士は紛争に関与できません。また、相手方と交渉もできません。つまり、離婚協議に口出しはできないのです。

協議離婚制度は極めて不合理な制度です。交渉は事態を悪化させるばかりです。離婚を前提とした両者が、相手のことを思いやるとは思えません。敵対的当事者に交渉させることは紛争を激化させるだけです。

考え抜いた末、私は発想を転換させました。離婚時ではなく婚姻時に着目したらどうかと考えました。二人がいがみ合う前に夫婦財産のことを決めれば、協議離婚のような不合理な結論にはならないはずです。まだ、相手のことを思いやる余裕があるうちに問題の解決を図れないかと思ったのです。そこで、行きついたのが「夫婦財産契約」でした。

行きついた「夫婦財産契約」

夫婦財産契約とは、婚姻時に、夫婦財産の取り決めをするもので、一度合意をしたら変更は許されません。皆さんも一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。ハリウッドスターなどが婚姻時に締結する契約で、プレナップなどとも呼ばれるものです。

早速、私は夫婦財産契約について法務局や裁判所で調査しました。結果に愕然とします。夫婦財産契約は、当時の日本で年間5件前後しかありません。さらに、登記簿を取り寄せると国際結婚がほとんど。日本人は利用していないことがわかりました。

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婚姻前に離婚の話。縁起でもないと思うかもしれませんが、現在の日本では3組に1組が離婚しているのです。

論文なども調べました。考えられる理由は3つです。まず、この制度があまり 知 られていないこと。次に、婚姻前に締結しなければならないなど使い勝手が悪いこと。そして何よりも、国民性です。夫婦財産契約は離婚を想定して合意するようなものです。婚姻時に離婚のことを考えて契約を結ぶなんて、縁起にこだわる日本人がすると思いますか?そもそも夫婦財産契約は日本人に向かない制度なのです。だから、利用者は国際結婚だけなのです。

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