寝ている間に不思議なことが繰り返される『こびとのくつや』
もうすぐクリスマスを迎える貧しい靴屋夫婦。残ったのは、1足分の靴の革だけ。明日になったら、最後の1足をいつも以上に心を込めて作り上げようと、型取りをした革を丁寧に切り、机の上に置いて床に就きました。翌朝目覚めてみるとどうでしょう! デザインも色合いもすてきな1足の靴が、机の上に完成しているではありませんか。靴はあっという間に良い値段で売れ、2足分の革を買うことができました。そして、毎晩寝ている間に同じことが起こり、そのたびに倍の量の革を仕入れていくのです。
寝ている間に小人たちが靴を作ってくれるというストーリーは、幼いころに見聞きした記憶がある方も多いのではないでしょうか。朝起きたら何かが出来上がっている、何かが届いている、何か新しいことが始まるという展開は、子どもの心をとてつもなくワクワクさせてくれますね。
いもとようこさんの絵が彩る世界
小さな小さな靴職人
昔話や童話を原作としたお話は、1つのお話が色々な作家によって絵本にされているものです。今回は、赤ちゃんや小さな子も親しみやすく愛くるしい雰囲気が人気の、いもとようこさんの絵による『こびとのくつや』をご紹介しました。2、3歳から親しめるお子さんもいるでしょう。
小人たちが夜の間に作った靴がずらりと並ぶページがあります。目移りしてどれもこれも履いてみたいなあと思ってしまうほど、個性豊かで魅力的な靴の数々。はだかんぼうの小さな小さな小人たちの職人技は、空想の世界をふんわりと果てしなく広げてくれます。
靴屋夫婦と小人たちの優しい心が交わる
この絵本のストーリーはとてもシンプルです。正直で一生懸命に仕事をしているけれど貧しい靴屋夫婦のために、2人の小人が夜な夜な靴を作り上げ、その気持ちに心を打たれた夫婦が小人たちに贈るクリスマスプレゼント。大人も子どもも日々を一生懸命過ごしてきた積み重ねの1年の終わりには、頑張りを見ている人は必ずいる、誰かのために心を尽くせばそれは跳ね返ってくるというストーリーは、新しい年へのささやかな活力にもつながるのではないでしょうか。
こんな小人がいてくれたら!
ところで私が小人たちの働きぶりを見て感じてしまったのは「ああ、こんな仕事の早い小人たちが我が家にもやってきて、寝ているうちに掃除や大量の洗濯物のたたみを手伝ってくれないかなあ!」。クリスマスムードに包まれる一方で、やるべきことが集中し何かと気ぜわしい年末、この絵本の小人たちは、忙しく動く大人たちの心もくすぐってくれる存在かもしれませんね。