テクノポップ/アーティストインタヴュー

(鈴木慶一+KERA)X新生ナゴム=No Lie-Sense(4ページ目)

ナゴムレコード30周年! 新生ナゴムレコードからの第1弾アーティストとして、No Lie-Senseが『First Suicide Note』を11月6日にリリース。No Lie-Senseは、秩父山バンド以来となる鈴木慶一さんとKERAさんのユニット。ユニット結成、レーベル再始動、製作中の話、そして昔話までお二人に語り尽くして頂きました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

「鉄道少年」の歌詞が怖い

ガイド:
ノスタルジックな「鉄道少年」も、シュールで怖いですよね。

鈴木:
怖いよね。子供、泣くよね(笑)。「鉄道少年」の歌詞が怖いのはさ、鉄道って轢死体とか思い浮かべるんだよ。下山事件じゃないけど。あと、俺が子供の頃の鉄道は黒煙を吹き出すSLもあったんで、トンネルに入った瞬間ものすごい黒い煙が入ってきたりする。意外と怖いんだよ、鉄道は。連結器のところとかさ、通り抜けられるけど、ちょっと怖い。

KERA:
列車の中に住んで一生を過ごす家族の話が戯曲であって、それが頭にあった。あと「大通りはメインストリート」って曲で慶一さんの歌詞でロバの首が出てきたから、ロバの首のない本体の方のことを書いたんです。

鈴木:
なんでロバが出てきたかっていうと、映画を観ていたんだな。『ニーチェの馬』。あれはロバじゃないけど。

ガイド:
同じ昭和でも、クレイジーキャッツ的なものだけではないというか。

KERA:
エッセンスとしてはクレイジーキャッツは大きいと思うんですけど、もっと暗い世界観も内包してますよね、アルバム的にはね。

鈴木:
つげ義春の見る夢日記みたいなものだ。

KERA:
真っ白い照明がパーッと明るくなる時って、怖いじゃないですか。闇も怖いけど、明るすぎるのも怖いですよね。

鈴木:
そうだね。蜷川さんがよくやる、暗転じゃなくて明転みたいなの。

KERA:
ホワイトアウト。

思わず笑ってしまったこと

ガイド:
作ってて思わず笑ってしまった、みたいなことはありましたか?

鈴木:
「MASAKERU」の真ん中あたりの緒川たまきさんの言葉の意味の分からなさとか鼻歌は何度聴いてもいまだに笑うけどね。録音する現場は俺はスタジオ内にいたんで分からないけど、外でKERAがハンディレコーダーで録って戻ってきたんだよ。それをコンピュターに入れ込んで聴いたら、ひっくりかえって10分は笑ってたね。

KERA:
スピーカーの手前から録り始めて、ダーッて走ってドア開けて階段で歌を録ってまた戻ってきて。音楽の録音現場では不適切なことをたくさんやってる。楽器じゃないものを楽器に使ったりとか。

ガイド:
アヴァンギャルドな実験をあくまでも遊んでやっているという感じですね。

KERA:
それでも全体としてはすごくポップな印象だと思うんです。慶一さんと僕の資質なのかなって気がするんですよね。アヴァンギャルドな音をやろうとしても、結果的にはポップな表情に仕上がる。
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