無形文化遺産と世界遺産の違い
世界遺産「オルホン渓谷の文化的景観」の雄大な景色。左がゲルと呼ばれる移動式家屋で、ゲルを中心とした生活習慣は「モンゴル・ゲルと関連の習慣に関する伝統技能」としてモンゴルの代表リストに記載されている
- 代表リスト(人類の無形文化遺産の代表的な一覧表)
- 緊急保護リスト(緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表)
無形文化遺産が世界遺産と異なる主な点は以下。
- 世界遺産が普遍的価値の質・内容を問うのに対し、無形文化遺産の価値は基本的に問わない
- 書類審査のみで現地調査は行わない
- 決定は記載・情報照会・不記載の3区分で、不記載の場合は4年間再審査不可
- 代表リスト・緊急保護リスト、いずれか一方のみの掲載
また、有形の文化遺産であればピラミッドやストーンヘンジのように滅んだ文明の遺跡であっても保護できるが、人づてに伝わる無形文化遺産の場合、一度失われたら再現・再興がとても難しい。そのため世界遺産では「不記載」決定を受けると再推薦はできないが、無形文化遺産は5年目以降であれば再推薦が可能だ。
緊急保護リストについて、世界遺産の危機遺産リストが世界遺産リストの中から選ばれるのに対して、無形文化遺産では登録される際にどちらか一方のリストを選ばなければならない。
無形文化遺産リストの詳細
リオのカーニバルに匹敵するともいわれるコロンビアの無形文化遺産「バランキーヤのカーニバル」。派手に装飾された山車・楽団・ダンサーたちがクンビアをはじめとする多彩な音楽をバックに街を練り歩く
- 代表リスト……314件
- 緊急保護リスト……38件
- ベスト・プラクティス……12件
- 加盟国……161か国
- 1位……37件(30、7) 中国
- 2位……22件(22、0) 日本
- 3位……17件(17、0) 韓国
- 4位……14件(13、1) クロアチア
- 5位……13件(12、1) フランス
- 6位……12件(12、0) トルコ
- 同……12件(7、5) モンゴル
- 8位……11件(11、0) スペイン
- 同……11件(11、0) インド
- 10位……10件(10、0) ベルギー
- 同……10件(8、2) イラン
日本の物件は以下22件だ。なお、無形文化遺産のリスト登録がはじまるのは2008年以降。それ以前の表記は「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」のもの。厳密にはこれら(能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎)のリスト登録年は2008年になる。
- 能楽(2001年、代表リスト)
- 人形浄瑠璃文楽(2003年、代表リスト)
- 歌舞伎(2005年、代表リスト)
- アイヌ古式舞踊(2009年、代表リスト)
- チャッキラコ(2009年、代表リスト)
- 奥能登のあえのこと(2009年、代表リスト)
- 雅楽(2009年、代表リスト)
- 京都祇園祭の山鉾行事(2009年、代表リスト)
- 甑島のトシドン(2009年、代表リスト)
- 秋保の田植踊(2009年、代表リスト)
- 小千谷縮・越後上布(2009年、代表リスト)
- 早池峰神楽(2009年、代表リスト)
- 大日堂舞楽(2009年、代表リスト)
- 題目立(2009年、代表リスト)
- 日立風流物(2009年、代表リスト)
- 結城紬(2010年、代表リスト)
- 組踊(2010年、代表リスト)
- 佐陀神能(2011年、代表リスト)
- 壬生の花田植(2011年、代表リスト)
- 那智の田楽(2012年、代表リスト)
- 和食:日本人の伝統的な食文化 ―正月を例として―(2013年、代表リスト)
- 和紙:日本の手漉和紙技術(2009年、2014年拡大、代表リスト)
日本の無形文化遺産「能楽」に使用される能面。謡(うたい)と囃子という伴奏で演じられる舞踊で、人形浄瑠璃文楽や歌舞伎にも大きな影響を与えた