国宝白水阿弥陀堂の新しい照明
写真1. 国宝白水阿弥陀堂と紅葉のライトアップ 写真撮影:金子俊男氏
昨年に引き続いて今年も11月9日から17日までの9日間、国宝白水阿弥陀堂の紅葉が最も美しい時期に合わせて夜のライトアップを行いました。
今年も全てLED器具を採用し、ソーラーパネルで発電した電力を使用しています。総W数は約1400Wで、ドライヤーよりも少ない消費電力で行っています。
今年はさらに新しい照明手法を随所に加えました。そのため昨年以上に見ごたえのある照明効果となっており、各地から多くのお客様が夜間拝観にこられました。
そこで昨年にはなかった新しい照明手法や照明器具について2回に分けて記述します。今回はお堂と紅葉のライトアップについて、次回は浄土庭園の池にかかる2橋の照明についてご紹介いたします。
大イチョウのダウンライティング
白水阿弥陀堂の近くにいわき市指定天然記念物の大イチョウがあります。昨年は地面にスパイク式の投光器でアップライティングを行っていましたが、今年はそれに加え9.5WのLED吊り下げ型のペンダント器具を木の枝から吊り下げるような形で4灯配灯しました。この器具は昼景でほとんど葉に隠れて見えません。(写真2 吊下げ器具 伊藤電工株式会社/FOCUS INDUSTRIES)
写真2.左:屋外用のペンダント器具 右:イチョウの木に左の器具を取付
イチョウの葉が落ち葉になったときの地面は黄色の絨毯になります。しかし夜になるとそれはアップライティングの光の陰になって目立たないことがほとんどです。
私たちはこの黄色の絨毯をあえて照明することで、人々の視線を下にも向け、空間の広がりをより感じさせる演出をしました。
明るく照らされた黄色の絨毯と木影とが重なり合った景色はまるで一幅の絵画を見ているようです。(写真3)
写真3. 大イチョウの落ち葉を照らし、黄色い絨毯の上に枝葉のシルエットを映しこむ仕掛け
また、来場者の中には子供たちもおり、落ち葉を空中に舞って遊んでいたところ、それが黄金に光り輝いて、とても印象的であった、という話も伺い、予想を超える効果を得ることが出来ました。(写真4)
写真4. イチョウの落ち葉で遊ぶ子供たち
屋外用器具で吊り下げ型のペンダントはあまりないので、いま全国で展開されている紅葉のライトアップでも、ダウンライティングを行われているところはほとんど見られないと思われます。ダウンライティングによって視点の下方向にも興味深い光が作れるのです。
次のページでは白水阿弥陀堂の屋根照明について紹介します。