ベルギー/ベルギーの観光

トゥルネーとワロン地方の世界遺産

観光客に溢れるブルージュやグランプラスに飽きたら、あまり訪れる人のいない地方都市トゥルネーや、ワロン地方へ足を伸ばしてみますか。ありきたりでない旅が待ち受けています。

栗田 路子

執筆者:栗田 路子

ベルギーガイド

脱ブルージュ&グランプラスでいきたい!
トゥルネーやワロン地方の世界遺産

ブリュッセルやブルージュに比べ、観光地としてはあまり知られていないフランス語圏ワロン地方にも、トゥルネーというベルギー最古の都市があり、また、各地に鉱山跡や船の昇降装置など、数々の産業遺跡があります。

公共交通機関の便が悪く、表示や案内もあまり行き届かず、英語の通用度もよくありません。でも、それぞれの分野に興味がある方、長く滞在される方には冒険先として面白いかもしれません。
二つの世界遺産がある

トゥルネー中心部(c)WBT-J.JEANMART


トゥルネー『ノートルダム大聖堂』とベルギー最古の鐘楼

トゥルネーはベルギー西部、フランス国境近くに位置する、ベルギー最古の都市。紀元4~5世紀当時、フランスやベルギーという国があったわけではないので、このあたり一帯で最も古い都市ということになります。

夜が訪れると古い建物が一斉にライトアップされ、町の中心を貫くエスコー河に沿って静かに幻想的に浮かび上がります。この神秘に満ちた光景は、観光客で溢れる都市に辟易した心に染み渡りますが、ブリュッセルから電車にゆられて1時間強……。電車の本数も少ないため、ブリュッセルから日帰りはあまりおすすめできません。フランス語圏ワロン地方とは言ってもフランダース地方との境界にも近いので、フランスのリル(Lille)、フランダースのコルトレイク(Kortrijk)からのアクセスも可能。英語の通用度も悪く、やや寂れた感のある地方都市なので心の準備が必要かも。

(c)WBT-Joseph Jeanmart

形状がユニークなノートルダム大聖堂

世界遺産に登録されたノートルダム大聖堂は、12世紀に建て始められたものですが、巨大なロマネスク様式の本堂や初期ゴシック様式の5本の塔などが、素人目にもユニーク。すでにいくつもの大聖堂を見てきた方にも、必見の価値あり。ルーベンスやヨルダーンスなどによる名画もあり、宝物殿にも見ごたえのありますが、内部は10年単位での大規模な改修工事が進行中。トゥルネーのグラン・プラスの東側に立つ鐘楼も、世界遺産に登録される鐘楼群のひとつ。1188年着工でベルギー最古のものとされています。

 

中央運河にかかる4基の水力式リフトとその周辺のラ・ルヴィエールおよびル・ルー

今も4基が稼動する

船の水力式エレベータ(c)WBT-JLFlemal

海に囲まれた島国日本では「運河」と言われてもピンと来ませんが、欧州にいると、川、そして運河が、産業の発展、そして地元の生活に深く関わってきたことを実感できます。今日ベルギーのあるあたりは、北海に向かって海抜がどんどん低くなっていく地域。内陸都市と北海沿岸の港を結ぶ船を運航させるために、高低差をなんらかの方法で是正する必要があったのです。

そこで産業革命以降に考案されたのが、水力を利用した船用エレベータ(日本ではリフトより一般的用語と考えてエレベータと書きます)。19世紀後半当時の技術では、60メートル以上の高低差を一挙に解決することができなかったので、階段状にいくつも建造して使用されました。世界遺産に登録された4基は今も稼動していますが、2002年に近くの別の場所に73メートルの高低差を一遍で昇降させる世界最大級のエレベータが建設されたので、以来、産業用船舶はそちらを使い、4基はもっぱら行楽や見学を目的とした船の航行に使われています。

また、周辺のロンキエール(Ronquière)という場所には、1968年に建造された、壮大な昇降機(こちらは、エレベータ式ではなく、エスカレータ式)があります。19世紀の水力式昇降機も、中央運河の73メートル昇降機も、そしてロンキエールの船舶エスカレータも、船がここを通過する様子を眺めるだけでも、また、実際に船に乗ってその昇降を体験しても、なかなかの醍醐味。天気のよい季節に、たっぷり時間をかけて、遠足気分で周辺を巡ってみるとよいでしょう。運河を航行する観光船ツアーもあります。

<DATA>
■4基の水力式エレベータ
住所:Rue Tout-y-Faut, 90 - 7110 Houdeng-Goegnies
TEL:+32 - 064/84.78.31
中央運河とボート昇降機(上記すべての昇降機の総合サイト)
ボートツアーRivertours


ワロン地方(ベルギー南部フランス語圏)にある主要な鉱山遺跡の数々(2012年)

複合博物館となっている

カジエの森(c)photo-daylight.com-Jean-Luc DERU

今日、ドイツ、フランス、ベルギーの国境にまたがる地帯は、良質な石炭鉱が見つかり、かつて大量の石炭が採掘されたところ。これにより、産業革命が可能になり、資本家が育ち、その後の鉄鋼産業の発展とともに、欧州の近代社会や経済が形成されていったのです。

日本ではあまり知られていませんが、現在の欧州連合EUの基礎となったのは、欧州石炭鉄鋼共同体(1950年)。世界遺産に登録されているのは、ベルギー南部ワロン地方を西から東に横断する、19世紀~20世紀初頭にかけて盛んに採掘された4つの炭鉱跡です。内部はよく保存され、見学も可能。シャルロワ近郊の「カジエの森」のパヴィリオンには、美味しいフランス料理レストランなども併設され、炭鉱跡見学以外の理由でも訪れられるようになっています。ただし、アクセスは不便で、英語による案内もほとんどなく、日本人にとっての観光的魅力はあまり高いとは言えないかもしれません。

鉱山跡は、Mons、La Louvière, Charleroi周辺に散らばっています。

<Data>
ワロン地方の主要鉱山跡群

その一つ、
「カジエの森」博物館、(Le Bois du Cazier)レストラン、展示会場複合施設
住所:Rue du Cazier 80, 6001 Marcinelle
TEL:+32 71 88 08 56
アクセス:シャルルロワ駅より、TECバス1、52番
休館:月曜
営業時間:火曜~金曜 9:00 – 17:00、週末は 10:00-18:00


スピエンヌ『新石器時代の火打石の鉱山発掘地』 

地下発掘場跡は広い

スピエンヌ(c)WBT-JLFlemal

「鉱山」と聞くと、どうも、石炭が掘り出される場所をイメージしてしまいますが、スピエンヌは、新石器時代の紀元前5世紀中頃から数世紀に渡って、石器の材料や火打石として重用された石英が採掘されていた地下抗。その後、100ヘクタールにも及ぶ採掘場の上に、要塞で守られた集落跡が見つかり、これらの遺跡は、欧州最古、最大規模のものとなりました。

新石器時代の道具や技術の歴史を理解する産業遺跡として非常に貴重なものとされていますが、実際現地にあるのは、のっぱらの洞窟となにやら研究所らしき建屋。世界遺産に恥じない探訪のできる場所とするために改装工事中が進行中で、少なくとも2014年末までは、見学不可とのことです。

<DATA>
minières néolithiaues de spiennes(スピエンヌ火打石発掘場)
住所:rue du Point du Jour, s/n. 7032 SPIENNES (MONS)
TEL:+32 65 35 34 78
交通:モンス駅よりTECバス134番(平日)または34番(週末祭日)でSpienne下車(ただし、本数が極端に少ないので充分に調べること)
*2014年末まで見学不可
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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