ゲーム業界ニュース/ゲームとビジネスニュース

日本のゲームを阻む、規模の壁(2ページ目)

日本のゲームが海外で売れない、という話は随分前から聞くようになりました。そしてその理由についても。日本と海外の趣味嗜好に違いがあるからであるとか、技術力に差があるから、とか。しかし、最早、文化や技術の差などよりも、もっともっと大きないかんともしがたい壁が、日本のゲーム業界には立ちはだかっているのです。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

264億円かけて2,900万本

GTAの図

海外のトップタイトルはとんでもない規模のビジネスになっています

非常に象徴的な例として、北米では2013年9月17日に発売されたグランド・セフト・オートV(以下GTAV)というタイトルがあります。日本でも約1ヶ月遅れて10月10日PlayStation3(以下PS3)とXbox360で発売され、約53万本を販売して大ヒットとなりました。ちなみに、うち約50万本がPS3版によるものです。今後年末商戦で更に売れるタイトルも登場するかとは思いますが、2013年発売のPS3用タイトルで最も売れているソフトは今のところGTAVです。

しかしそれでも、日本で50万本売れたなんていうニュースは、GTAVにとっては些細な事柄でしかありません。何故なら、それ以上に海外で売れているからです。テイクツー・インタラクティブによると、全世界の出荷本数は発売から約6週間でなんと約2,900万本。年末商戦はここからが本番ですから、3,000万本突破のニュースが届くのも時間の問題でしょう。

そして、GTAVはゲームの開発や、広告宣伝などに約264億円もの莫大な費用がかかっていることも話題になりました。文字通り桁が違います。

PS4やXbox oneの登場でさらに加速

次世代機の図

次世代機の登場によって、この傾向はさらに進むことが考えられます

GTAVの日本国内売上は2013年におけるPS3用ソフトでもトップクラスの売上というお話をしましたが、当然、そんな数字では264億円なんて巨額を投じることはできません。最早50万本とか、100万本とか、そういうレベルでは金勘定をしていないのです。しかし、海外で大きなシェアを獲得できていない日本のゲームメーカーは、そういう日本の据え置きゲーム市場をベースにしてコンテンツ開発をしなければいけません。

そう考えると、文化差や技術力の前に、規模が違いすぎて、海外のメーカーと張り合うことすら難しい状況が見えてきます。

GTAVの例は、極めて特殊な例です。極めて特殊どころか、ゲーム史上最もお金がかかっているゲームであると言っていいでしょう。しかし、これがこの先、極めて特殊な事例のままであるかといえば、そうは言えないでしょう。

むしろ、GTAVの成功によって、実績があり、ファンがしっかりついている大作シリーズに、より大金を投じて、より大規模な開発、そしてより大規模な広告宣伝を行っていくという流れは加速していくことになると考えられます。

しかもここでWii Uに続き、PlayStation4、そしてXbox Oneといった次世代ハードが登場します。より高性能なハードの登場により、ゲームの表現は次の段階に進むことができますが、開発費の高騰もまた、次の段階に進むことになると考えられます。普通に考えれば、海外と日本の差も、さらに大きなものとなるでしょう。

そして国内市場も、安泰とは言えません。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます