「○○をいただけますか」が気になる理由とは?

「お名前(様)をいただけますか」が気になる理由とは

よく使う「お名前をいただけますか」も省略せずに言うことで誤解なく伝わることもあります、うまく使い分けましょう

「○○をいただけますか」という表現は、電話や窓口などさまざまな場面で耳にすることの多い言葉です。たとえば、「恐れ入りますが、お名前様をいただけますか」というような例がそうですが、この言い方はそもそも適切なのでしょうか? 改めて考えてみましょう。

まず、ここで問題になる点はふたつあります。ひとつは「お名前様」の部分です。これは結論から言いますと「お名前」で十分です。相手の名前ですから、丁寧に扱いたいということから生じたものと思われますが、「名前」に「お」が付くことで尊敬語になっていますから「様」はいらないわけです。

もうひとつは、「いただく」の部分です。こちらは言葉が省略されていると考えれば意味は通じるものですが、それでも少々気になる、不自然な感じを受けるという人も案外多いのはなぜなのでしょうか。

「いただく」というのは、 自分が相手からもらうこと、(もらって)飲食することを指す言葉です。敬語の種類で言えば、「もらう」の謙譲語の意味を表します。「(先生からお土産を)いただいた」「(先生のお宅で夕食を)いただいた」というような使い方が本来の正しい使用例です。

このように考えますと、相手の「名前」はあげたり、もらったりできるものではありませんから、そのような点で「お名前をいただく」というのは、不自然な言い方にも聞こえるのでしょう。こちらも言っている側の気持ちとしては丁寧に表したいというところからきているのだと思いますが、「~いただく」の、何をどうしてほしいのかという部分をきちんと述べたほうが、誤解もなく丁寧さも増すものです。

では、先ほどの例と合わせて、よく聞く例を誤解のない言葉に言い換えてみましょう。

よく聞く例
1:「お名前をいただけますか」
2:「ご住所とお電話番号もいただけますか」

■言い換え例
1:「お名前をお教えいただけますか」
2:「ご住所とお電話番号もお教えいただけますか」

このような言い方がよりふさわしいでしょう。ほかにも「伺う」や「聞く」を用いて「お名前をお伺い(お聞き)できますか」「お名前をお教えいただけませんでしょうか」「お名前をお伺い(お聞き)できませんでしょうか」などの言い方もできます。

「お名前をいただけますか」は、このように「お名前を」(お教え)「いただけますか」という(  )の部分が省略された言い方と考えられますが、(  )内を省かずにきちんと表したほうが、相手に誤解や不快感を与えることなくより丁寧に伝わることがわかります。日ごろ何気なく使ってしまう表現でも、気になるときには少し考えて言い換えてみるというのも、心くばりや工夫のひとつといえるでしょう。


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