テラス オン・ザ・ベイ（ホテル日航東京）

夜景に勝つ料理

夜景の綺麗なレストランは目の前の女性と景色に神経が飛んでしまい、料理は記憶に残らない、といったことがかつてあった。同じような経験をお持ちの方も多いのではないかと思う。しかし、東京スカイツリーの上にある天空のレストラン「634」もそうだったが、景色やロケーションに打ち勝つ料理が増えてきたことも事実だ。

お台場駅に直結のホテル日航東京にある「テラス オン・ザ・ベイ」の料理もそうだった。季節の食材を使ったフランス料理であることは言うまでもなく、素材、ソース、組み合わせ、そしてホスピタリティに私は久しぶりにプロフェッショナルの仕事を見た。
アプローチはウォールに絵画が飾られ（この時は藤田嗣治の作品）、柔らかな灯りの中、テラス席に向かう軽いドキドキ感に包まれる。

ゆったりとしたテーブル配置が心地良い。シャンパーニュは007御用達のボランジェ。骨太さと繊細さ、そしてほのかな熟成感のバランスがよく、アペリティフにしておくのはもったいないくらいだ。
「秋」をテーマにしたフルコース（15,750円）を選択。アミューズの後はカワハギのカルパッチョ。ホワイトバルサミコと白ワインのジュレが添えられる。肝の味わいが味覚を膨らませ、ほんのりとした苦味と酸味がシャンパーニュボランジェとともに記憶に残るマリアージュとなる。決して出しゃばらないカルパッチョだが、ソースのフレッシュさに現代フランス料理のあり方が見える。

さあ、珠玉の料理を見ていこう。