家族ドラマの秀作
『そして父になる』(2013年度作品)
エリートとして順調にキャリアアップしてきた良多(福山雅治)だけれど、ある日、6年間育ててきた息子が他人の子だったことが判明。先方の家族との交流を積み重ねながら、血か一緒に過ごした時間か……と、苦悩する物語。
実際に起こった赤ん坊取り違え事件をベースにして作られた映画で、優秀な主人公は生まれて初めて、自分ではコントロールできない事態に遭遇し、もがき苦しみます。相手の家族が貧しいながらも生命力に溢れユニークで、主人公の家族と対照的。彼らがコメディリリーフ的な役割も担っていて、重くなりがちな題材を軽やかに見せています。
是枝監督自身、父親になってから自分を掘り下げていくことを意識して映画作りをしているそうで「自分だったらどうするのか……」と悩みながら演出していたと語っています。そして、見ている方も「血か時間か」と見ながらモンモンと考えてしまうという……。アメリカでのリメイクも決まった『そして父になる』。カンヌ国際映画祭審査員賞受賞も納得の傑作です。
監督: 是枝裕和
出演: 福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、二宮慶多、黄升げん、 中村ゆり、高橋和也、田中哲司、井浦新、風吹ジュン、國村隼、樹木希林、夏八木勲ほか
(C)2013『そして父になる』製作委員会
『歩いても 歩いても』(2007年度作品)
家族とともに実家に戻った次男(阿部寛)一家。長男は15年前に亡くなり、両親は平然としているように見えてまだ立ち直れず、いまひとつソリの合わない次男は居心地の悪い思いをします。しかし、ぎこちない交流の中、次男は両親の老いを感じて……という家族ドラマ。何でもない日常の風景に宿るひとりひとりの感情が、何気ない一言や行動に現れ、思わずわが身を振り返ってしまいます。個人的には『そして父になる』や本作のような家族ドラマが是枝監督作の真骨頂かなあと思います。
監督: 是枝裕和
出演: 阿部寛、夏川結衣、YOU、高橋和也、田中祥平、寺島進、加藤治子、樹木希林、 原田芳雄ほか
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