不動産売買の法律・制度/ガイド:平野の私的不動産用語集

セットバック

「セットバック」についての用語解説です。不動産取引と建築の場面で、セットバックには2つの異なる意味があるため、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。(2017年改訂版、初出:2006年8月)

執筆者:平野 雅之


セットバック

【せっとばっく】

敷地のセットバック

建築物の敷地は、原則として建築基準法に定める幅員4m以上の道路に間口が2m以上接していなければならないが、古くからの市街地などには幅が4mに満たない道路が数多く存在する。

そのため、建築基準法が適用される以前(昭和25年11月23日以前)、または都市計画区域に編入される以前から存在し、それに沿って建物が立ち並んでいたような幅員4m未満の道路で特定行政庁の指定を受けたものは、道路とみなすことになっている。

このような道路を「42条2項道路」あるいは単に「2項道路」または「みなし道路」などというが、その指定を受けているか否かがポイントになる。

建築基準法上の道路とみなされて建物の建築が可能となる代わりに、道路の中心線から2mの位置まで敷地を後退させなければならない。

道路の両側の敷地でそれぞれ後退することによって将来的に4mの道路幅員を確保しようとするものであり、この敷地境界線の後退を「セットバック」という。不動産の広告などでは「SB」と略してその面積が表示されている場合もあるだろう。

既存の道路中心線から2mの位置が敷地と道路の境界線とみなされるため、セットバックした部分の土地は、たとえ個人の所有のままであっても建ぺい率や容積率を算定する際の敷地面積には含まれず、セットバック部分に塀や門などを立てることもできない。

ここに植木鉢などを並べている風景をよくみかけるが、本来は置いてはいけないものだ。

また、道路を挟んで向かい側が川や崖地などの場合には、向かい側の道路境界線から4mの位置まで一方的にセットバックをする必要がある。

なお、特定行政庁により道路の最低幅員が6mと定められた区域では、セットバックが道路の中心線から3mのラインに設定される。

建築物敷地の接道義務は原則として都市計画区域および準都市計画区域内に限り適用される規定のため、それ以外の地域では建築基準法による敷地のセットバックがない。


建物外壁等のセットバック

道路幅員による「敷地のセットバック」だけでなく、次のような場合にもセットバックという用語が使われる。

1.壁面線の指定により建物の壁またはこれに代わる柱を道路境界線から後退させる場合
2.外壁後退距離の指定により建物の壁またはこれに代わる柱を道路境界線から後退させる場合
3.道路斜線制限の緩和を受けるために建物外壁を道路境界線から後退させる場合
4.日照や通風の確保のため、建物の上階を下階よりも後退させて建てる場合

セットバックという用語の本来の意味は「4」が該当するようだ。しかし、不動産取引のなかで単に「セットバック」といえば、たいていは上記の「敷地境界線のセットバック」を指す。

それに対して、建築業界のなかで「セットバック」という場合には「建物のセットバック」を指すことも多いため、両者を混同しないように気をつけなければならない。とくに、土地を購入して注文住宅を建てるような場合には注意が必要だ。


>> 道路
>> 狭あい道路

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