死を前にした寺山修司独特の世界観

■作品名
さらば箱船

■監督
寺山修司

■主演
山崎努

■DVD販売元
パイオニアLDC

■おすすめの理由

いとこ同士で一緒になった捨吉とスエ。しかし、村には血統の二人から生まれた子供は犬の顔をするという言い伝えがあるので、そのことを案じた父がスエに貞操帯をつけ性生活を持つことができないようにさせ、捨吉とスエは結ばれることは出来ませんでした。

ある日皆の前で大作に不能とからかわれた捨吉は大作を殺してしまう。やがてこの事件をきっかけに捨吉は精神的におかしくなり、ある出来事がきっかけで村の人に殺されてしまう。そんな村にも近代的な波が押し寄せてやがて村民はこの村を去ってしまいます。

この映画は捨吉とスエの恋愛も描かれていますが、それより村における二人の立場が重点的に描かれています。この二人は禁断的ともいえる関係の中で、住民から疎外され、時には嫌がらせもされています。村人に対して自己を主張するというよりも、それを黙って受け入れる姿が描かれています。

やがて映画の最後では現代(100年後)、この村の住民達が暮らす様子が描かれます。捨吉とスエは子供を持ち、集団のしがらみもなくなり、個人で生きている様子が描かれています。しかし、寺山修司は最後のシーンでこの村の住人たちが集まって写真を撮り、そこに写し取られるのは、100年前と変わらぬ村人の姿です。

スエが「100年たったらその意味わかる! 100年たったら帰っておいで!
100年たったら」と叫びながら、この現代のシーンの前に、あの世に通じる穴に身を投げました。寺山修司は結局100年たっても、結局は何も変わらないと言いたかったのでしょうか。

この映画の公開前に寺山修司は亡くなりました。この映画は難解ですが、死を前にした寺山修司独特の世界観を見ることが出来ます。




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