心を揺さぶる、国際線の船で台湾へ向かう旅
■書名微熱の島 台湾
■おすすめポイント
著者の台湾への旅路は、沖縄の那覇から台湾に向かうフェリーから始まります。普通は飛行機で海を越えて始まる海外旅行ですが、船で海に浮かびながら移動をして海外へ向かう旅程だけでも、読者の心を激しく揺さぶります。
通常、国際線の飛行機の中は、初めての国に向かう人々の期待感が充満し、楽しさが満ち溢れているものです。ところが、国際線の船となると、様子はがらりと変わります。乗客の大半が台湾からの買い出し組で占められるため、生活の場の一つのような様子となります。残念ながら、この航路は現在就航していませんが、このような海外旅行もあるのかと驚かされてしまいます。
旅行社が企画したパッケージの旅行などでは体験できない、一人旅ならではの旅の魅力に満ち溢れています。表現も堅苦しい言い回しがなく、優しく美しい文体となっています。その中に、著者の聡明さや判断力、行動力が滲んでいます。
日本と台湾は歴史的に微妙な関係にある国です。台湾で巡り合った人たちとのやりとりから、日本人としてのアイデンティティを問い直すことにもつながりそうです。
■微熱の島 台湾
著者:岸本葉子
出版社:凱風社
発売日:1996年11月1日
定価:630円
※データは記事公開時点のものです。