ウォルト・ディズニー・カンパニーに就職した「普通の女子大生」
世界的な企業は世の中にたくさんあるが、ウォルトディズニーはその代表的企業だ
私は決して大手有名企業に入ることを応援しているわけではなく、1人1人が自分に合った会社や仕事を見つけて、それに挑戦することを支援しているので、報告を受けた企業が知名度の高い企業でも、知らない企業でも嬉しさには変わらない。
ただそんな私でも過去に一度、内定報告を受けた時に言葉を失ったことがある。
その学生は都内の私立大に通う女子大生で、アヤというニックネームで大学3年時に私の研修に参加した。意欲的な学生だなぁと思いつつも、何も特別な学生ではなかったので特に意識はしていなかった。
彼女が4年生になって数カ月たったある日、私はアヤから内定の報告を受けた。
アヤ「良二さん、私ディズニーに内定もらうことが出来ました!」
私「へ~、すごいじゃん、良かったね。じゃあ、来年から舞浜で働くんだね?」
アヤ「いえ、舞浜のディズニーではないんです……」
私「え? じゃあどこのディズニーなの?」
アヤ「ウォルト・ディズニーです。ニューヨークの本社に採用されました。」
私「……」
言葉を失った。
私はディズニーと聞いて、てっきり舞浜のディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドに内定をしたと勘違いしていた。オリエンタルランド自体、学生からは超人気企業なので「すごいなぁ」と思ったが、アメリカのウォルト・ディズニー・カンパニーに採用されたと聞いて言葉すら出なかった。
なぜなら、アヤは私から見ると本当に普通の女子学生だったのだ。
目立つ就活生は学生団体のリーダーや部活の部長をやっていることが多かったが、アヤの学生時代に頑張ったことを聞くと「大学の授業」という至って平凡な答えだったのだ。
そんな平凡なアヤが、就職サイトにものっていない世界的企業のウォルトディズニーの内定をどのように勝ち取ったのか、私には想像も出来なかった。
しかし彼女の内定までのエピソードを聞くと、なぜウォルトディズニーの本社が彼女を採用しようと決めたのか納得出来た。
夢を周囲に語り、支援者を得て、熱意を行動で示した
実はアヤにとって、ディズニーで、しかも海外で働くことは長年の夢であったようだ。そして彼女はその夢を自分の中にしまっておかずに、周囲にとにかく語り続けたという。「私は海外のディズニーで働きたい!」と周囲の友人や知人に語りまくった。
そんなある日、彼女が取っている授業の外国人教授から声をかけられたという。「お前は本気で海外のディズニーで働きたいのか?」と言われたので、アヤは即答で「本気です!」と答えた。その教授は静かに頷き、アヤに1つのチャンスをくれた。
「私の知り合いに1人ディズニー関係者がいる。彼にアヤのことを伝えてみるが、本人から連絡がくるかどうかは保証出来ない。あまり期待せず待っててほしい」。
それから数週間経った頃、アヤにアメリカからメールが届いた。
送り主はニューヨークにあるウォルト・ディズニー・カンパニー本社の人事担当から。
「今後日本人の採用を1人検討しているから、いつか長期の休みでアメリカに来る機会がもしあれば連絡をください」という内容だった。
そして、その後アヤがとった行動がすごかった。
彼女はそのメールを受け取って、3日後にはニューヨークにいたのだ。
チャンスが来たら即行動、彼女は自分の本気さを行動で示した。
そして1日かけてディズニー本社を見学させてもらい、人事担当や役員と面接も行い、彼女はその場でウォルト・ディズニー・カンパニーの内定を勝ち取って日本に帰ってきた。
この話を聞くと、ただのラッキーな学生のエピソードに聞こえるかもしれないが、私はアヤの就活から、就活でとても大切なことが学ぶことが出来た。
誰が彼女をディズニーにつないだのか
私は彼女が渡米した時に、きっと勝負は8割ほど決まっていたのではないかと思う。もちろん、すぐに行動に移したアヤは素晴らしいが、大切なのはアメリカでの時間ではない。彼女の勝負を決めたのは、日本での時間だと私は思う。
私はウォルト・ディズニー・カンパニー本社の人事が、「ディズニーで働きたいと夢を持っている」というだけで日本の知らない学生にメールを送るとは考えづらい。きっと誰かが彼女のことを強烈に推薦したのだろう。
では誰がウォルトディズニーの人事を動かしたのか?
当然、アヤの授業で教えていた外国人教授だろう。
実はアヤは高校の頃からその先生の授業を受けたいという強い気持ちがあり、あえて有名私立大学を合格を蹴って、その先生が教えている中堅私立大に入学を決めている。
当然それぐらいの気持ちで入学しているので、誰よりも授業を頑張っていた。授業以外の時間もその先生の部屋に押しかけて質問をしていた。
そんな自分の意思を持って、物事に一生懸命取り組めるアヤを見て、その教授は確信したのだろう。彼女なら世界のウォルトディズニーでやっていける、と。
だからこそ、彼女の見えないところで、彼女のことをゴリ押ししてくれたのだ。
しかしそんなチャンスが巡ってきても、準備をしていない人はそのチャンスを活かせない。
彼女が3日後にアメリカにいたとしても、英語でコミュニケーションが取れなければ面接どころではないが、彼女は海外で働く夢を持ってから、ずっと独学で英語の学習に取り組んでいた。だから、あの瞬間に臆することなく渡米出来たのである。
就活は一歩間違えば、エントリーシートや面接の対策に集中しがちである。しかし本当に大切なのは、面接でも履歴書でもない。
その学生自身が日々の生活の中でどこまで自分自身の夢のために努力をしてるか、自分だけに頼らず周りの支援を得ているか、そしてチャンスが来た時には勇気を持って行動できるかにかかっていると思う。
そんな大切なことを、アヤは私に教えてくれた。
最後に私は彼女に何も立派なアドバイスなどしてあげることは出来なかったと思っていたら、こんなことを言ってくれた。
「良二さんが私につけてくれた“突破力”というキャッチコピー、アメリカにいつ行くか迷ったときに真っ先に浮かんだ言葉でした。ありがとうございました!」
【関連記事】