聞きやすい話し方をするには
話上手になる第一歩は、今の自分に足りないものが何かを知ることから始まります。まず話し方の基本ワザを学び、自分に必要なポイントを押さえておきましょう。流暢に話せなくても、聞きやすい、わかりやすい、感じのいい話の仕方ができればいいのです。
聞きやすい話し方のポイントとは?
話し方の基本として押さえておきたいポイントは少なくありません。しかし、最初から全部をカバーしようと難しく感じてしまいます。まずは目的別の大切なポイントだけに絞って練習をはじめましょう。
まずは、話すことで何を得たいのかを決めましょう。
例)
情報を伝えたい
何かについて理解してほしい
相手と仲良くなりたい
いい印象を持ってもらいたい
欲しい結果を明確にすると、どのように伝えたらいいか対策が立てやすくなります。気をつけたいポイントを多くすると難しく感じてしまいます。まずは目的別に気をつけたい最低限のところだけを意識して練習してみましょう
例)
情報を伝えたい時→簡潔に伝える、聞き取りやすい声の大きさで話す
理解してほしい時→わかりやすい言葉を選んで話す、例えを使って話す
仲良くなりたい時→適切な話題を選ぶ、話をよく聞く
印象をよくしたい時→表情や態度にも気を配る、話す分量と聞く分量のバランスをとる
続いて、それぞれのポイントを事例を交えながら解説していきます。
情報を伝える話し方の基本1:簡潔に伝える
ポイントは3つ以下に絞ると伝わりやすい
ポイント:駅前にパスタの店ができた、美味しかった、月末まで開店セールをやっている
話し方の例:「駅前にできたパスタの店、すごく美味しかったよ。今月末まで開店セールで半額だから、行ってみれば?」
悪い例)
ポイント:パスタはダイエットに良い、駅前の店が良かった、駅前には映画館が多い、食事をする場所も増えてきた、パスタの店では半額セール中
話し方の例:「もしかしてパスタって好き?そういえばパスタってダイエットにもいいらしいよね。炭水化物だけど。外食とかしなかったら、知らなくてもいいかも知れない情報だけど、駅前の店意外とよかったよ。あの辺って映画館とか多いけど、食事するところも増えてきたよね。再開発とかするのかな。それでさ、半額セールやってたからパスタ屋に入ったんだけど、なんていうか本格的な味でさ。というか、半額ってすごくお得な感じしない?」
悪い例のほうだと、一体何を伝えたいのかわからないですよね。話ベタの人がやってしまいがちなNGポイントは以下のとおりです。
- 前置きが長すぎて、なかなか本題に入らない
- 余計な情報を付け加えすぎて、大事なポイントがわからなくなる
- 話が整理されていないので、何が言いたいのかわからない
これらは、話すまえにちょっとした準備の時間をとることで解消することができます。慣れるまでは、いきなり話を始めずに、頭の中で構成を組み立てるといいでしょう。たくさん伝えたいことがある場合は、話題を混ぜずに分けて話せばOKです。
例)
「ダイエットの話題」→「駅前の話題」→「新しくできたパスタのお店の話題」
友人などと雑談する場合は多少話題が混じるのもいいと思います。しかし、ビジネスシーンの場合、簡潔に伝えることが求められますので、普段の会話の時から意識しておくことをオススメします。慣れれば自然にできるようになりますが、普段整理されていない話し方をしていると、イザという時に簡潔に話せないのはあたりまえなのです。
情報を伝える話し方の基本2:聞き取りやすい声の大きさで話す
声の大きさは理解度に影響を与えます。聞き取りやすい声の大きさで話すだけで理解度が上がるというデータもあるくらいですので、ボソボソと話す癖のある方は、まずはじめに取り組むことをオススメします。
人前で話す時(スピーチやプレゼンテーションの時)には、通常の会話の時より大少し大きめかなと思うくらいの声で話してください。具体的には、レストランなどで人を呼ぶ時に「すみませーん」という大きさを意識するようにするといいでしょう。実際に話す時には思っているより小さな声になりがちなので、ちょうど聞きやすい大きさに落ち着きます。
小さな声で話す癖を直せたなら、次に意識してほしいのは滑舌です。ハッキリした発音は理解を助けるだけでなく、印象をよくする効果もあります。母音を意識して発音するだけでも改善が見込めますので、一日3分ずつ練習してみてください。
例)
キレイな車 →母音である「いえいあううあ」を意識して発生練習をする
おはようございます → 母音である「おあおうおあいあう」を意識して発生練習をする
アナウンサーを目指す人、劇団員の人、話し方教室などで発生練習に使っているものでは、北原白秋の「五十音」、歌舞伎の「外郎売(ういろううり)」などが有名です(筆者のオススメは北原白秋の「五十音」)。興味のある方はネットで検索して試してください。
理解を助ける話し方の基本3:わかりやすい言葉を選んで話す
理解してもらうことが目的なら、わかりやすい言葉を使って話すことが重要です。相手の年齢やバックグラウンドなどを考慮し、わかりにくい言い回しは一般的なものに直して伝えるようにしましょう。
年配の人にわかりにくい例)
ググる→グーグルで検索する、インターネットで検索する
若い人にわかりにくい例)
ズック→靴、シューズ
衣紋かけ→ハンガー
難しい言葉の例)
理想と現実の乖離→理想と現実のギャップ、理想と現実の差
ビジネスシーンでは多少堅い言い回しが必要なこともありますし、同じ業界であれば専門用語を使っても問題ないことがほとんどです。しかし普段の会話ではなるべく難しい言葉を使わないように気をつけるようにしましょう。
理解を助ける話し方の基本4:例えを使って話す
何かを説明する時、理解を助けてくれるのが「例え」です。相手がピンとこない時には、例えを使って説明できないか考えてみましょう。
【CASE1】
フランスの洋菓子サバランは、ブリオッシュをラム酒につけた食べ物で、若い女性に人気があります。サバランを食べたことのない60代の男性に、食感を伝えるためには何に例えたらいいでしょうか?
(例えを考えてみてから読み進めてください)
ジュワっと汁がでる食感の食べ物で、60代男性が実際に口にしたことのある食べ物を探してみます。筆者なら高野豆腐や、出汁巻卵、おでんのはんぺんなどに例えて伝えます。既に知っているものに例えると、知らないものでもイメージがしやすいので、説明などをする時に便利です。
相手が知らないことを説明する時に便利な「例え」ですが、あたりまえだと思っていることへの理解を深めるためにも有効です。
【CASE2】
「どうせできない」と思いながら努力している友人に、後ろ向きな考え方をやめるように伝えたい場合、あなたならどんな例えをつかいますか?
(例えを考えてみてから読み進めてください)
回答例1)
アクセルとブレーキを両方踏んでもうまく進まないじゃない?「できない」なんて思わずに前向きに頑張ろうよ
回答例2)
梅干しを口に入れたところを想像してみて。ね、唾液がでるでしょ。人ってイメージからかなり影響を受けちゃうよね。どうせ頑張るんなら、もっとポジティブに考えたほうがいいんじゃないかな
例えを使いながら話すと「あたりまえ」と思われがちなことにも説得力が出てきます。例えはいろんなシーンで使えますので、日頃から鍛えておくといいでしょう。
仲良くなれる話し方の基本5:適切な話題を選ぶ
仲良くなりたい時は共通点をみつけよう。
共通点のある相手には、親近感を持ちやすく、初対面でも打ち解けやすいというメリットがあります。特に趣味などの「好きなもの」が一緒の場合、話はさらに盛り上がりますし、相手の興味関心や共通認識がわかれば、質問をするのもラクです。では、どのように共通点を見つければいいのでしょうか。
話が弾むための共通点を見つける。そのコツは以下のとおりです。
1、情報開示をしながら相手に心を開いてもらう
共通点を見つけるには質問が欠かせません。しかし、質問ばかりしていると、尋問のようになってしまいます。相手のガードを下げてもらうためにもまずは自分が情報開示をするところからはじめましょう。自分が先に情報を開示することで、相手も話がしやすくなります。
例)
「私は○○出身なのですが、ご出身はどちらですか?」
2、ピンポイントではなく大きめな質問をする
質問の目的は正確な情報を知ることではありません。共通点が増えるように
ピンポイントな質問よりも大きめの質問をするようにしましょう。
例)
△「私は大阪出身なのですが、ご出身はどちらですか?」
○「私は関西出身なのですが、ご出身はどのあたりですか?」
△「私は○○(映画のタイトル)が好きなのですが、好きな映画はなんですか?」
○「私はアクション映画が好きなのですが、どんなジャンルの映画がお好きですか?」
3、誰でも興味を持つジャンルから探す
美味しいものが好き、旅行が好き、健康に気を遣っている……など、多数の人にあてはまるような話題なら共通点が見つけやすくなります。誰でも興味を持つ話題をいくつか用意しておきましょう。
仲良くなれる話し方の基本6:話をよく聞く
相手と仲良くなりたいのであれば、聞き上手に徹して相手にたくさん話してもらうのもいい方法です。もちろん皆さんは人の話をよく聞いていると思いますが、ちゃんと話を聞いていてもそう見えないことがあります。「あなたの話に興味がありますよ」というサインを送るためにも、頷き、相槌、質問などを積極的に活用しましょう。
相槌の例)
「なるほど」「さすがですね」「ビックリ」「おもしろいですね」「そうだったんですね」
話上手な人は、実は聞き上手であることが多いもの。驚き、笑い、感心といったリアクションや質問を上手に使って、相手が話しやすい雰囲気を作るのが上手いのです。どんな相槌をうっていいかわからない時には、相手の話の語尾を繰り返すというテクニックもオススメです。
相手の話を繰り返す例1)
「今日は朝から電車に乗り遅れちゃってさ。昼間は分刻みでスケジュールも入っていたし、帰り際に仕事を頼まれちゃうしでクタクタなんだよね」
「クタクタなんですね」
相手の話を繰り返す例2)
「いろんな映画を見てきたけど、やっぱりスターウォーズが一番だと思うんだよね」
「スターウォーズが一番なんですね」
これなら初心者でも、真似できますよね。これも難しいと思う人は、話を聞きながら頷くことからはじめてみましょう。相手にわかりやすいよう、少し大きめに頷くこと、ゆっくり頷くことがコツです。話さなくてはと焦るよりも、聞き上手を目指すほうが、仲良くなりたい場合には有効なのです。
印象をよくする話し方1:表情や態度にも気をつけて話す
相手に好印象を与えたいのなら、「非言語コミュニケーション」が話の内容以上に大事になってきます。表情、雰囲気、服装、しぐさなど、言葉以外の部分も情報を発信していることを自覚しましょう。
例えば、無意識にやっている腕組み。これは相手を拒否する時や、心を開けない時にやってしまうポーズとして有名です。もしあなたが知らずにやっていたとしても、相手が知っていた場合「心を開いてくれていないのだな」「警戒されているのかな」といった印象を与えてしまいます。また、手を口で隠すしぐさは、嘘をついている時や本心でないことを言っている時のポーズとして有名です。
自分がどんな癖を持っているか、一度友達や家族などに教えてもらうといいかも知れませんね。家庭用のビデオで自分の話し方をとってチェックするのもいい方法です。
話ベタな人の緊張や不安も、表情やしぐさ、声のトーンなどで相手に伝わってしまいます。気楽に前向きな気持ちで取り組んでください。どうしても緊張がとけないのであれば、話をするまえに軽く体を動かすこと、笑顔をつくるという方法がオススメ。暗い顔をすれば、感情も暗くなるという実験もあるくらい、人は行動に引っ張られるものです。笑顔で暗い声を出すのが難しいように、表情は声のトーンにも影響を与えますので、その特性を逆に活かし、いい印象を残しましょう。
印象をよくする話し方2:話す量と聞く量のバランスを考える
聞きやすい話し方のポイントとは?
流暢に話すことができても印象がアップするとは限りません。好印象を与えたいのであれば、話す分量と聞く分量のバランスも大切です。
皆さんは自分の話ばかりして、人の話を聞かない人にいい印象を持ちますか?話を聞いてもらうと承認欲求が満たされ、話を聞いてくれた相手に対して好感を持ちやすくなります。逆に、話の腰を折られたり、会話に割り込まれたりすると、人は不快になります。会話をする時には、話すこと以上に、聞くことにも注力しましょう。
相手に話をしてもらいたい時には質問を活用します。話題に関する事を質問することで、相手の話を深堀りすることもできますし、話題を広げることもできます。
質問の例)
「そのレストランは、どのあたりにあるんですか?」
「食べ歩きはよくなさるのですか?」
「今までで一番よかったオススメのレストランはどんなところですか?」
質問は相手の話を引き出す効果があるだけでなく、「あなたの話に興味を持っていますよ」というサインにもなります。注意点は、尋問のようにならないよう気をつけること。話したくない情報もあるということを前提に、ぼかしを入れた質問ができるとベターです。
ぼかしを入れた質問の例)
「どのお店に行ったのですか?」→「どのあたりのお店に行ったのですか?」
質問をうまく活用し、聞くのを7割、話すのを3割くらいを目指してみましょう。きっと好印象を残せますよ。
話し方の基本をいろいろご紹介しましたが、一度に全部をやろうと思わず、目的別にできるところから意識してみてください。繰り返すうちに無意識にできるようになりますので、その段階で新たな基本技を身につければよいのです。一歩一歩、話上手を目指していきましょう。