キッチンの床には、水や汚れ、傷に強く、掃除のしやすい素材を
床材は、空間のデザインはもちろん、日々の暮らしの快適さにも大きく影響する建材のひとつ。新築やリフォームの際には、リビングや寝室などの居室空間に用いる素材はイメージできても、キッチンやトイレなどの水まわりの床材は、何を選んだらいいのか悩む方も多いかもしれません。調理や片付けなどの作業を行うキッチンの床材は、間取りやキッチンプラン、使い方などに適した素材を選ぶことが大切です。水がこぼれたり油が飛んだり、食器やカトラリーが落ちたり、ワゴンや踏み台などを動かしたりと、他の居室の床に比べ、過酷な状況におかれるので、水や傷に強いことはもちろん、汚れにくくお手入れがしやすい素材を選ぶことが基本でしょう。
また、立ったままの作業も多いので、素材のクッション性にも配慮しておきたいもの。足元の冷えなどが気になり床暖房を希望する場合は、事前に対応できる素材かどうかの確認も必要です。その他、スリッパを掃いて作業するのか、床には敷き物(マット)を使用するのか、などが選び方に影響する場合も。日頃のキッチンでの作業スタイルも考慮しておくポイントのひとつです。
汚れがつきにくく、拭き取りやすい表面仕上げ。すり傷にも強く、ワックスがけをしなくても美しさが長持ち。 [アーキスペックフロアーA サニタリー用] パナソニック エコソリューションズ
キッチンの主な床材の種類と特徴
■木質フローリング 性能を高めたキッチンに適する素材も木質フローリングには、むく材と複合(複層)フローリングがあります。むく材は、単層フローリングとも呼ばれ、単一のむく材でできたもの。複合(複層)フローリングは、合板(基材)の表面に化粧材を張り合わせたもので、用いる化粧材によって、薄く削った天然木の単板(突き板)を用いるタイプと、樹脂化粧シートなど特殊加工の化粧材を張ったタイプに分けることができます。
一般的な住宅の居室で多く用いられているのは、複合(複層)フローリング。最近、多くみられるLDKがひとつの空間となった間取りでは、キッチンの床にも多く取り入れられている素材です。化粧材の表面加工等によって耐水性や汚れ防止、耐傷性などが高められた商品も増えてきており、素材や色、価格など商品バリエーションも豊富。最近では、大理石やタイルの風合いを持ったタイプも揃い、水まわり空間の清潔さとモダンな雰囲気を演出するものとして注目されています。
むく材は、水などが染み込みやすいという難点はあるものの、素材の持つ風合いや足触りの良さが魅力。こまめにお手入れを行う必要はありますが、ナチュラルな空間を生み出すことができるでしょう。
キッチン特有の汚れが拭きとりやすく、お掃除の手間を軽減。 凹みにくいのも特長。[キッチン専用フローリング キッチンケア] DAIKEN
塩化ビニールを用いた長尺(ロールシート状)の床材で、CF(シート)と呼ばれることも。耐水性に優れ、汚れも付きにくく落しやすい素材なので、水まわりに多く用いられています。クッション材が裏打ちされているので適度な弾力性もあり、足腰が疲れにくく、食器を落しても割れにくいのもメリット。価格も手ごろで、色や柄などのバリエーションも豊富です。従来に比べ高級感のある商品も多く、フローリングや大理石、タイルを模したものなども。性能面でも、防カビ加工を施したもの、抗菌や消臭機能を持つタイプなどもみられます。
施工が比較的簡単なので、リフォーム時はもちろんDIYで張り替えることも可能ですが、熱には弱く、また、足触りは好みが分かれるところでしょう。商品によっては濡れていると滑ることもあるので注意が必要です。
■Pタイル(プラスチックタイル) さまざまな色や柄が揃う
塩化ビニル樹脂などを用いて、タイル状に加工した床材。比較的堅く、耐久性や耐磨耗性、耐薬品性に優れています。色や柄のバリエーションも豊富です。
■タイル デザイン性も高く個性的なキッチンが実現
温かく古びたイメージの質の高いタイル。個性的なキッチン空間を実現できる。 [スタイルプラス ブリケージ(内床タイプ) 300mm角平(内床タイプ)] LIXIL
また、素朴で温もりを感じるテラコッタタイル(素焼きのタイルなど)には、ざまさまな種類があり、耐水性や耐久性の高い素材もみられます。性能やお手入れ方法については、商品によって異なるので、事前に確認しておくことが大切です。
■コルク タイルやフローリングタイプなども
コルク樫の樹皮を原料とした圧縮成形した木質系の床材。コルクを粒状にし焼き固めたもの。タイル状のもの(コルクタイル)だけでなく、コルクフローリングとした商品も。キッチンには、表面仕上げなどに工夫を施した、水や汚れに強いタイプが適しています。堅牢で耐久性に優れ、吸音性、断熱性も高く、また、適度な弾力性があるので、足腰への負担も少ないのが特徴でしょう。
LDKのつくりで選び方も変わる。空間トータルで検討を
ダイニングやリビングにつながるオープンなキッチンの床材は、インテリア性にも配慮して選びたい。[アレスタ] LIXIL
たとえば、独立型のキッチン(クローズドキッチン)であれば、キッチン空間内のみで床材を検討することもできるでしょう。しかし、最近多くみられる、キッチンとダイニングやリビングがオープンにつながった間取りプランの場合、空間としての統一感に配慮することが必要に。人気の対面キッチンやアイランドキッチンでは、ダイニングやリビングと同じ床材(フローリングなど)を用いるケースも多くみられるようになりました。
もちろん、キッチン部分だけ異なる素材としても、素材感や色合いなどを吟味することで、統一感を持たせることは可能です。ただし、貼り分ける場合の見切り(仕上材の変わる部分)の設け方など、充分に検討することが大切でしょう。
キッチンでの作業を考慮して優先順位を明確にする
機能性とインテリア性を考慮して検討することが重要ですが、明確にしておきたいのは、優先順位。「幼い子供がいるので掃除のしやすさを重視」「お客様が多いのでインテリア性が重要」など、家族構成やライフスタイル、料理内容などを考慮して、何を重視するのかを事前に確認しておくことがポイントです。また、リフォームの場合であれば、既存スペースの状況によって選ぶ素材が限られるケースもあるかもしれません。最近では、厳しい条件でも施工しやすい工夫がなされている商品も増えてきているので、上手に取り入れることで、使い勝手のいい空間が実現するでしょう。
根太張り施工に対応したリフォーム向け。水や汚れに強い表面仕上げが施され、水まわりに適する。 [オーマイティRフロアーA] パナソニック エコソリューションズ
キッチンの扉材とのコーディネートにも配慮して
限られたスペースであるキッチン空間は、システムキッチンなどのキャビネットと床材なの組み合わせによって大きくイメージが変わるもの。床材を選ぶ際には、キャビネットの扉材とのコーディネートにも配慮して選ぶようにしましょう。ショールームでは、それぞれの素材の見本を突き合せるなどして、確認を。キッチンショールームの空間展示やモデルハウスのインテリアコーディネートなども参考にして、まとまりのある空間となるような素材を選ぶことが大切です。
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