Pick of the Month
観る人ひとりひとりに突き刺さる、パーソナルな問題作『next to normal』(上演中~2013年9月29日=シアタークリエ、2013年10月4~6日=兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールhttp://www.tohostage.com/ntn/)
『next to normal』写真提供:東宝演劇部
右からダイアナ(安蘭けい)、夫ダン(岸祐二)写真提供:東宝演劇部
身近な誰かが「ノーマル」でなくなってしまった時、距離を置くのがいいのか、そっと寄り添うべきか。言葉をかけるべきか、かけるならどんな言葉がいいのか。……答えのない問題を突き付けられながらこの家族の行方を見守る観客は、一筋の希望が差し込むそのラストに、人生に対するいくばくかの勇気を得て、劇場を後にする。2009年のブロードウェイ初演以来、この異色作がカルト的な人気を得ている理由は、そこにあるのでしょう。
(ダイアナ役、安蘭けいさんのインタビュー記事も御覧下さい。http://allabout.co.jp/gm/gc/422950/)
*以下は、公演開幕が早い順にご紹介します*
『ドラキュラ』
(上演中~9月8日=東京国際フォーラム ホールC)http://dracula-the-musical.com/
『ドラキュラ』撮影:清水隆行
『ミュージカル 李香蘭』
(9月8~29日=四季劇場[秋])http://www.shiki.gr.jp/applause/rikoran/index.html
『李香蘭』撮影:上原タカシ
「ミニ・レポ」
劇中には第二次大戦末期の悲惨な記録映像や、特攻隊の遺書を俳優たちが語るくだりがあり、観る度に胸にずしりと突き刺さります。初演以来タイトルロールを演じている野村玲子さんは、実際の山口淑子さんが「李香蘭」だった年月よりも長く、「李香蘭」を演じているのだとか。にもかかわらず、少女時代を振り返るシーンで7歳の李香蘭として登場する彼女は、本当にあどけない少女に見えてしまうのが凄い!
『タンゴミュージカル ロコへのバラード』
(9月19~29日=東京グローブ座)http://www.duncan.co.jp/web/stage/loco/
『ロコへのバラード』
「ミニ・レポ」
彩吹さんのスモーキー・ヴォイスと脚線美は、タンゴにぴったり。ビシャグラさんが加わったこともあってか、タンゴ音楽&ダンス部分はいっそう本格的な印象に。長年のタンゴファンとおぼしきご高齢の観客たちも喜ばれていましたし、演劇的な手法でタンゴの可能性を広げている点においても非常に意欲的、かつ評価に値するショーです。「人と関わることっていいな」とじんわり感じさせる内容も、人と人が濃密に関わり合うタンゴダンスの本質と、みごとにシンクロしています。
『音楽劇 それからのブンとフン』
(9月28~29日=KAAT神奈川芸術劇場、10月3~15日=天王洲銀河劇場)http://www.horipro.co.jp/usr/ticket/kouen.cgi?Detail=213
『それからのブンとフン』
『フォーエヴァー・プラッド』
(プレビュー公演9月29日=志木市民会館パルシティ、10月1~10日=東京グローブ座、10月12~13日=KAAT神奈川芸術劇場、その後北海道、新潟、仙台、宮崎、福岡、大阪、名古屋、東京東大和、越谷、水戸を11月17日まで巡演)http://www.forever-plaid.com/
『フォーエヴァー・プラッド』
「ミニ・レポ」
ファンキーな歌唱が絶妙な川平さん、クラシカルな発声が素敵な鈴木さんら、まったく異なる声質の4人が、とっつきやすいメロ ディながら実は難しそうな4声コーラスに取り組む。その姿は、個性も背景も異なる役者が集まり取り組む、“芝居”というものの暗喩のようです。川平さんは期待を裏切らないエンターテイナーぶりですが、今回驚かされたのは鈴木さんの、ピアノ演奏を含めた多才ぶり。長野さん、松岡さんもそれぞれにチャーミングで、4人の魅力を惜しみなく引き出した板垣恭一さんの演出が見事です。伴奏にテープや賑やか編成のバンドを使わず、バイオリン・ベース・ピアノのバンド、 Everlyのアコースティックな音で包み込んでいるのもいい。そして全編の根底にある、「夢半ばで逝ってしまった若者たちが、一日だけこの世に戻って夢 をかなえる」という前提。明るくからりとしているのに、胸締め付けられるほど切なく、そしてあたたかな舞台です。
『音楽劇 ヴォイツェク』
(10月4~14日=赤坂ACTシアター、10月25日~27日=シアターBRAVA!)http://www.tbs.co.jp/act/event/woyzeck/
『ヴォイツェク』
「ミニ・レポ」
正常と異常の境はどこにあるのか、人間はそれを決められるのか、と鋭く問うてくる舞台。脆く不安定な精神を抱えるヴォイツェクを全身で表現する山本さんは、「人生」を歌う時だけ、突き刺すようなまっすぐな声で発声。ヴォイツェクの中の“正気”を表現しているかのようです。終盤にはミニマルな装置にもかかわらず、歌舞伎の『夏祭』『女殺油地獄』に匹敵する、グロテスクな殺しのシーンが展開。三宅さんの音楽はジプシー音楽をベースに控えめにたゆたいます。
「AllAboutミュージカル」で特集予定、あるいは特集した演目
『コーラスライン』(9月1~23日=自由劇場)『コーラスライン』撮影:下坂敦俊
『ロミオ&ジュリエット』(9月3日~10月5日=東急シアターオーブ、10月12~27日=梅田芸術劇場)
出演・尾上松也さんのインタビューを「気になる新星インタビュー」で掲載しました!http://allabout.co.jp/gm/gc/428305/
『エニシング・ゴーズ』(10月7~28日=帝国劇場)
『エニシング・ゴーズ』