<目次>
屋敷神等祠の種類
これらは屋敷神(やしきがみ)ともいわれ、その家と土地を守ってくれる神さまです。家の中の神棚などに祀られるのは「屋内神」であり、屋外の祠や社(やしろ)に祀られる屋敷神とは区別されています。また、同じ地域に住む人たちの共通の神さまである「氏神」や「鎮守」とも異なります。
家の敷地に祠や社が建てられた経緯はいろいろあるでしょうが、もともとは五穀豊穣を願う農耕の神さま、あるいは祖先を神として祀る風習によるものが多いでしょう。
しかし、現代ではとくに都市部において祖先神の性格は薄れ、農耕も主体ではなくなったことから、家の守り神として祀られている例が大半だろうと考えられます。ご神体も不動尊、地蔵尊、稲荷、道祖神、庚申塔などさまざまですが、一般的に屋敷神の多くは稲荷のようです。
丁寧に祀られている場合には、祠や社だけでなく鳥居を備えていることも少なくありません。初めから敷地内に祠などが造られたのではなく、もともとは水田の一角にあった農耕神の祠が、宅地開発に伴って敷地内に取り込まれた例もあるでしょう。
住宅売買の際の祠取り扱い
これらが家人によって守られているうちは何も問題ないのですが、その敷地を売買しようとするときには少し厄介です。売主からすれば、祠などがあることにより購入者が限られ、なかなか売れない懸念もあるでしょう。買主によっては取り壊しを要求してくるかもしれません。買主の求めに応じて取り壊すときでも、買主が納得する方法で処理することが大切です。また、祠付きの敷地を購入した買主も、家を建て替える際に祠をそのままにするべきなのか、移設するのか、あるいは取り壊してもよいのかと迷うことがあるはずです。
祠を取り壊したからといって怒り出したり住人に祟ったりするほど、神さまの器量は小さくないでしょうが、それでも「祠を勝手に動かして祟られた」「祠を撤去したら不幸に遭った」というような話はネット上にもたくさんみられます。
気持ちの問題もあるため、祠をそのまま残したり、神主さんを呼んでお祓いなどの神事をしてもらったうえで建築の邪魔にならない位置へ移設したりするケースも少なくありません。
敷地の売買時における宅地建物取引士の重要事項説明では、「敷地内に祠などがある」という事実のみが説明され、それをどうするべきなのかといった話にはならないでしょう。
祠を取り壊して家族に不幸があったなどといっても、不動産業者が責任を取ってくれるわけではありません。祠などをどうするのかは、あくまでも買主自身が決めなければならないのです。
マンションの敷地内に祠が残されている場合もありますが、このようなときは台座を含めて、きれいに造り直されることが多いようです。
その一方で、建売住宅が分譲される前の敷地に祠などがあった場合には、もとの土地が細分化されるとともに、それが撤去されるケースが大半です。このようなときは祠などがあったという事実自体も説明されないでしょう。
非課税の祠
ちなみに、敷地内にある祠や社などで、ご神体を祀り日常的に礼拝しているものをとくに「庭内神祠」(ていないしんし)といいます。この「庭内神祠」およびその部分の敷地は、相続税法において非課税財産となります。以前は祠や社などが非課税財産で、その敷地は非課税措置の対象外とされてきましたが、2012年6月の東京地裁判決に基づいて、敷地も非課税対象となりました。
ただし、「庭内神祠」が建立された経緯や目的のほか、敷地への定着性、敷地が一体のものとして日常礼拝の対象となっていることなど一定の要件を満たさなければなりません。課税逃れの目的で祠を建てただけのような場合には、敷地の非課税措置が認められないことになります。
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