先進国株ファンドが好調
やや古いデータになるかもしれませんが、図は2013年7月末現在の過去1年間の外国株式を投資対象とする投資信託の上昇率です。純資産総額20億円以上、ETF(指数連動型上場投資信託)、ブル・ベア型ファンド、また投資対象に日本株を含むファンドは除いていますが、新興国株式を投資対象とする投資信託は上位10位には連ねていません。正確には、10位の朝日Nvestグローバルバリュー株オープンなどのように、新興国株式を組み入れることができるファンドもありますが、主な投資対象は先進国株になっています。
BRICs、VISTAなどの新興国をもてはやす造語ができたり、チャイナプラスワンとしてASEAN諸国が注目されてきたことを考えると、先進国株ファンドか上位を独占というデータを見ると隔世の感があります。当面は、米国の金融緩和縮小などの不透明感が拭えないことから、先進国からの資金流出により厳しい局面が続くでしょう。
しかし、長期にわたる国の成長を考えれば、再び新興国株ファンドが脚光を浴びることがくると思われてなりません。逆張り的な視点であれば、新興国株ファンドに種をまく準備をこの秋ぐらいから始めてもよいと考えています。
グローバル株ファンドはハリス社が目立つ
ランキングを見ると投資対象は、米国株式や欧州株式、ゲノム関連などのテーマ株式型のほか、グローバル株式で運用されるファンドが複数ランクインしているのがわかります。そのグローバル型ファンドの内3本に共通点があることを見逃してはなりません。米国のハリス・アソシエイツ社が運用にかかわっているのがそれです。ハリス・アソシエイツ社とは聞き慣れない運用会社かもしれませんが、正確には日本に拠点がないため国内の運用会社の運用代行を行っています。
ハリス・アソシエイツ社(ハリス・アソシエイツ・エル・ピー)は、1976年に米国シカゴを本拠地として成立された運用会社です。バリュースタイル運用に確固たる信念を持ち、すべての株式ファンドを一貫したバリュー哲学に基づき運用しています。銘柄選択は本源的価値よりも著しく割安で取引されている優良企業を徹底したリサーチで特定し、株主および経営者の視点から一貫性のある長期投資を実践しているのです。
ハリス・アソシエイツが運用代行しているファンドは、5位の「ハリス世界株ファンド(毎月決算型)、10位の「朝日Nvestグローバルバリュー株オープン」ともに運用会社は朝日ライフアセットマネジメント。9位の大和証券投資信託委託「ダイワ/ハリス世界厳選株ファンド」です。3本とも5位以下に甘んじているうえ、騰落率は日本株ファンドに見劣りするかもしれないが、1年間で60%を超えている運用成績であれば申し分ないと思われます。
運用スタイルを検証してみる
運用履歴が1番長い10位の「朝日Nvestグローバルバリュー株オープン」を取り上げ、その運用スタイルを検証してみることにしましょう。2013年7月31日基準のマンスリーレポートによれば、1年間の騰落率は62.7%ですが、設定来(2000年3月24日)では257.4%になっています。純資産総額の320億円に対して組み入れ銘柄数は35銘柄と絞り込まれています。組入上位10銘柄が純資産総額に占める割合は43.5%もあるため、銘柄の選択と集中が行われていることがわかります。マンスリーレポートには組入上位20銘柄まで記載されていますが、クレディ・スイス・グループ、ダイムラー、ゼネラル・モーターズ、マスターカードなどといった投資をしない人でも会社を知っている銘柄が並んでいます。つまり、銘柄選択では特別変わったことをしているわけではありません。
2013年3月18日決算日の運用報告書によれば、売買高比率は0.72と1を下回っていることから、全銘柄の内7割強しか入れ代わっていないことになります。好成績をあげている日本株ファンドの共通項が中小株式を投資対象としている、全銘柄が年に3回入れ代わるような高い売買高比率なら、ハリス・アソシエイツが運用代行している3ファンドは、日本株を投資対象とする好成績ファンドは間逆の運用スタイルであるのです。
選択と集中という銘柄選択を行った後、適切な投資タイミングで投資を行い、投資した後は成果が出るまでじっと待つ、いわゆる典型的なバイ&ホールドを愚直に守り運用を行っているのです。
個人投資家も個別株投資で真似ができる運用スタイルと考えられますが、ハリス・アソシエイツ社のように、どんな相場局面でも平常心で信念を貫く運用が貫けられるか否かが好成績をあげられるかの境目と思われてなりません。