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なんで任天堂はゲームを値切るゲームを作ったか(3ページ目)

任天堂がニンテンドー3DSダウンロードソフトとして発売した、「だるめしスポーツ店」というゲームが話題になっています。このゲームなんと、ゲームを値切ることができるゲームなんです。この不思議なソフトからは、任天堂のダウンロードビジネスに対する考え方が垣間見えます。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

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買い物をエンターテイメントする

ダウンロードする3DSの図

オンラインでゲームを販売するという課題に対して、だるめしスポーツ店は任天堂らしい1つの答えを示したようにも感じられます(イラスト 橋本モチチ)

任天堂がオンラインでゲームをダウンロード販売していくにあたって、折に触れて2つの大きな課題に言及することがありました。その1つは「ウィンドウショッピングが楽しい場所にする」ということです。

本来それは、ニンテンドーeショップの動作を快適にし、色んな角度からゲームがオススメされて、行く度に発見があるようにする、というようなことで解決されていく課題とされていますが、だるめしスポーツ店は、全く別の角度から買い物の楽しみを提供するゲームになっています。

もう1つの課題は、「ゲームの価値を守る」ということです。オンラインによるゲームのダウンロード販売は、ゲームの低価格化、無料化の流れを誘導する傾向があります。ただし、ポイントになるのはただゲームが安くなっていくということよりも、価格が下がることでユーザーがゲームにたいした価値を感じなくなることです。

例えば、大量の安いゲームがダウンロードされて少し触っては捨てられる、というような消費スタイルは、ゲームの価値の低下をまねくでしょう。遊び捨てるような消費スタイルにユーザーを誘導することは、長期的に見て業界に大きなリスクをもたらすかもしれません。

だるめしスポーツ店のゲームを値切ることができるというコンセプトは、一見ゲームの価値を守るのとは逆のように思えるかもしれませんが、中身をみると、お金を出してゲームを購入してもらう、じっくり遊んで満足してもらう、次のゲームが欲しくなる、という流れを意識的に作っていることが分かります。価格交渉やハンコシステムは、ゲーム体験に満足したユーザーにはさらにお得に次のゲームが買えるようにしようという仕組みです。

オンラインの仕組みが整って、ゲームメーカーはお店を通してパッケージ販売するだけでなく、ゲームを通じてユーザーに課金していくビジネスモデルについても追求していく時代になっています。それはゲームを作るだけではなく、ゲームを売る仕組みをどう考えるかということで、必ずしもゲームメーカーのもともとの守備範囲ではありませんでした。実際、任天堂にしても、オンライン販売の手法についてはかなり試行錯誤を繰り返しています。

そんな中で、だるめしスポーツ店は、実にユニークで、しかもゲームメーカーならではの方法で、ゲームの購入体験をエンターテイメントし、気持ちよくお金を払ってもらって、面白く遊んでもらう仕組みを提案しています。

イヌジの風貌がすごく汚らしかったり、頭がピッチングマシーンでスーツを着た男が手でボールを投げてきたり、ミニゲームのパッケージに頬を紅潮させて快感に酔いしれてる男性の顔がいつも登場していたりと、全体的にシュールでふざけ倒した印象のゲームなんですが、そこにはオンラインでゲームを販売していくために必要なことは何なのか、真剣に考えるヒントがあるように思います。

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